三浦しをん著 『舟を編む』
       




              
2012-11-25




(作品は、三浦しをん著『舟を編む』    光文社による。)

           
 

 初出 CLASSY(光文社刊)2009年11月号〜2011年7月号
 本書 2011年(平成23年)9月刊行。

 三浦しをん :(本書より)

 1976年東京都生まれ。2000年「格闘する者に○」でデビュー。2006年「まほろば駅前多田便利軒」で直木賞受賞。小説に「風が強く吹いている」「仏果を得ず」「神去なあなあ日常」「木暮荘物語」など、エッセイに「悶絶スパイラル」「あやつられ文楽鑑賞」「ふむふむ おしえて、お仕事」など著作多数。 

主な登場人物

馬締光也

大手総合出版社玄武書店辞書編集部勤務、27歳。院卒入社3年目に辞書編集部に引き抜かれる。人とのコミュニケーションに多少難あり。堅苦しすぎる性格が周囲に気を遣わさせる。
西岡は馬締の、ものが違うこと認識する。

西岡正志 同じ編集部に勤務の、馬締と同年代の人間。朗らかで物怖じせず、他人との間に垣根を設けぬ性格。「大渡海」編纂途中宣伝広告部に異動させられる。
岸辺みどり 西岡が去って数年後、後任として配属される。入社3年間女性向けファッション誌勤務、辞書編集部に異動し、戸惑う。
辞書編集部の関係者

・松本先生 監修役
・荒木公平 定年退職後社外スタッフとして編纂に関わる。
・佐々木さん 資料係の40代女性。契約社員。

林香具也 馬締の下宿先のタケお婆さんの美人の孫。京都で板前修業を終え、下宿先に同居。馬締からのラブレター(?)に戸惑う。
物語の概要:図書館の紹介より

 玄武書房に勤める馬締光也は、新しい辞書「大渡海」を編む仲間として辞書編集部に迎えられる。個性的な面々の中で、馬締は辞書の世界に没頭する…。三浦しをんの、日本語への敬意と愛に満ちた最新長編小説。

読後感:

 まず辞書づくりを題材にしたことに驚く。しかし考えてみると子供の時からお世話になり、今も辞書はある程度電子辞書のようなものに取って代わられている感もなきにしもあらずではあるが、自分としては電子辞書の不便さもあり、読書時の不明な漢字の読みを引くのに使いやすいと思われる漢和辞書を購入して机の上に置いていることを考えると、この作品に引かれるところが大きい。

 さて、内容はと言うと、辞書を新たに作る辞書編集部に引き抜かれた馬締なる男と、編集部にいる西岡、そして西岡の後任に配属なった岸辺が語りの中心になって、辞書作りの様子が展開されるのだが、関連して馬締の恋愛や、西岡から見て仕事に対する生き甲斐、自分の存在感、誇りや挫折感を感じる様子が、そして新しく配属になった岸辺がどうやって馴染んでいくかが展開されて読者を引きつけてやまない。

 辞書作りを通して言葉の移り変わり、言葉の大切さ、日頃から言葉に対して敏感であることの大切さを改めて思い知らされる。

 また印刷紙のことで“ぬめり感”と言う言葉に、辞書を選ぶときの基準にも有ったことを思いだし、やはりねえと得心。こういう所にも印刷会社が技術開発をしていることに思いを至らしめた。
 

 余談:
 読書をしていると日頃ほとんど無関心でいた事柄とか、当たり前で見過ごしていたことに改めて注意や想いを喚起される事柄に出会うことがよくある。こんなことも読書の良さかなと思う。    
背景画は本作品中の内表紙を利用。

                    

                          

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