読後感:
まず辞書づくりを題材にしたことに驚く。しかし考えてみると子供の時からお世話になり、今も辞書はある程度電子辞書のようなものに取って代わられている感もなきにしもあらずではあるが、自分としては電子辞書の不便さもあり、読書時の不明な漢字の読みを引くのに使いやすいと思われる漢和辞書を購入して机の上に置いていることを考えると、この作品に引かれるところが大きい。
さて、内容はと言うと、辞書を新たに作る辞書編集部に引き抜かれた馬締なる男と、編集部にいる西岡、そして西岡の後任に配属なった岸辺が語りの中心になって、辞書作りの様子が展開されるのだが、関連して馬締の恋愛や、西岡から見て仕事に対する生き甲斐、自分の存在感、誇りや挫折感を感じる様子が、そして新しく配属になった岸辺がどうやって馴染んでいくかが展開されて読者を引きつけてやまない。
辞書作りを通して言葉の移り変わり、言葉の大切さ、日頃から言葉に対して敏感であることの大切さを改めて思い知らされる。
また印刷紙のことで“ぬめり感”と言う言葉に、辞書を選ぶときの基準にも有ったことを思いだし、やはりねえと得心。こういう所にも印刷会社が技術開発をしていることに思いを至らしめた。
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