湊かなえ著 『ユートピア』










              2018-11-25
(作品は、湊かなえ著 『ユートピア』    集英社による。)

          

  初出 「小説すばる」2014 年6月号〜2015年8月号、単行本化にあたり加筆修正。
  本書 2015年(平成27年)11月刊行。

 湊かなえ:(本書より)
 
 1973年広島県生まれ。2007年「殉職者」で第29回小説推理新人賞を受賞、受賞作を収録した「告白」(08年、双葉社刊)でデビュー。同作は09年、本屋大賞を受賞し、映画化もされ、大ヒットをおさめる。他に「少女」「贖罪」「Nのために」「夜行観覧車」「白ゆき姫殺人事件」「母性」「望郷」「絶唱」「リバース」など著書多数。
      

主な登場人物:

『クララの翼』関係者

堂場奈々子
夫 修一
娘 久美香

老舗仏具店を営む。鼻崎町で生まれ育つ。1丁目の代表。
・修一 八海水産勤務。
・久美香 小学1年生、7歳。昨年交通事故で車椅子生活。

相場光稀(みつき)
夫 明仁
(あきひと)
娘 彩也子
(さやこ)

雑貨及びリサイクル店<プティ・アンジェラ>を営む。八海水産に勤める夫の転勤に伴って5年前に鼻崎町に住む。4丁目の代表。
・彩也子 小学4年生。キッズモデルのように容姿端麗。久美香の親友。

星川すみれ

陶芸家、祭りの全体代表。鼻崎町の美しい景観に見せられ家を建てた美大時代の恋人・宮原健吾に誘われて、2年前に移住してきた。「クララの翼」を立ち上げる。

宮原健吾

雑貨店<はな工房>のオーナー。すみれのパートナー。東京の美術大学時代すみれと同期。八海水産辞めNPO法人立ち上げ、すみれに誘い。5丁目の代表。

<岬タウン>に移住の住人達
 芸術村と呼ばれる様に

第一号 ベンジャミン(オーストラリア出身の写真家)とミレイ(写真家)
第二号 宮原健吾 星川すみれと住む。
第三号 村田ジュン、妻菊乃(調理師免許所有)五丁目の<はなカフェ>
第四号 小谷るり子(自称詩人)、夫ミツル(ガラス細工)
第五号 富田チヨ(人形作家)と夫三郎

SICA モデル
里香、真紀 <プティ・アンジェラ>の店番。
小梅 星川すみれと美大時代陶芸家の同期生。近頃ファッション雑誌やテレビで頻繁に見かける。すみれにとって女優デビューならいいのに、肩書きは“陶芸家”に棘の存在。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 海辺の町で出会い、ボランティア基金「クララの翼」を設立した3人の女性たち。ささいな不協和音から、やがて隠された事件が姿を現す…。善意は悪意より恐ろしい。心理ミステリの決定版。       

読後感:

 ボランティア基金「クララの翼」を星川すみれ、相場美稀、堂場奈々子の三人で立ち上げる。元になったのは祭りの際の火事に伴う美談、堂場奈々子の一人娘久車椅子生活の久美香とそれを助けた相場美稀の一人娘彩也子が作った詩、そしてそれをサポートしてプロデュースした星川すみれ。しかし世の中で広まるに従って三人の間に静かに広まる亀裂が生じてくる。

 それは家族や鼻崎町の出身、外からきた人間、さらには景色がいい静かな場所ということで芸術村とも呼ばれるようになった<岬タウン>に住む住人、田舎という都会とは異なる感覚のずれなど身近な問題だけに誤解や誹謗中傷が生まれやすい状態を醸し出していく。
 心理ミステリーとも。

 もう一つ大きい背景に、この町から5年前に殺人事件があり、金が隠されていてそれを取りに犯人(”芝田”)が戻ってきているという噂があった。
 ラスト三人の身に降りかかっている状況はどういう結末を迎えることになるのか?そして殺人犯は誰?さらに意外な真実がさらっと語られている。
  

余談:

 ユートピアについて堂場奈々子がラスト付近で語っている。
 生まれた時から住んでいる場所を、花が咲いて美しいところだとか、特別な場所だと思ったことなど一度もない。そういうのは、外から来た人が感じることだ。地に足つけた大半の人たちは、ユートピアなどどこにも存在しないことを知っている。ユートピアを求める人は、自分の不運を土地のせいにして、ここではないどこかを探しているだけだ。永遠にさまよい続けていればいい。といいながらユートピアに誰よりも焦がれているのは、奈々子自身なのだ。
  

背景画は、森・木をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

           
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