湊かなえ著 『白ゆき姫殺人事件 』






               
2013-05-25



   (作品は、湊かなえ著 『白ゆき姫殺人事件』   幻冬舎による。)

            

 初出 第一章 同僚T 「小説スバル」2011年5月号
     第二章 同僚U 「小説スバル」2011年7月号
     第三章 同級生 「小説スバル」2011年9月号
     第四章 地元住民「小説スバル」2011年11月号
     第五章 当事者 「小説スバル」2012年1月号
     「しぐれ谷OL殺人事件」関連資料
     集英社WEB文芸「レンザブロー」にて、
     2011年5月〜2012年1月の期間で掲載。
  本書 2012年(平成24年)7月刊行。

湊かなえ: (本書より)
 1973年広島県生まれ。2007年に「聖職者」で小説推理新人賞を受賞。翌年、同作を収録した「告白」でデビュー。この作品が2009年の本屋大賞に輝き、映画化を経て、累計300万部の大ヒットに。2012年、「望郷、海の星」で日本推理作家協会賞短編部門を受賞。著書に「少女」「贖罪」「境遇」「サファイア」など。
 
 

物語の展開図書館の紹介文より 

 「あの事件の犯人、隣の課の城野さんらしいよ」。美女OLが惨殺された不可解な事件を巡り、ひとりの女に疑惑の目が集まった。噂が噂を増幅する。果たして彼女は残忍な魔女なのか、それとも…  

主な登場人物:

狩野里沙子 「日の出化粧品」勤務の新人。育成役の2年先輩のパートナーが三木典子。

満島栄美
(みっちゃん)

狩野里沙子と同期で同じ部署に配属された新人。育成役の2年先輩のパートナーが城野美姫。
城野美姫 特徴が余りない平凡で地味な人。料理が上手で手弁当派、お茶の入れ方もうまい。三木典子と同期。しぐれ谷殺人事件の犯人の噂。殺された以降姿を消している。
三木典子 美人、ランチ派。しぐれ谷でめったづきにされ、灯油で火を付けられて殺害される。
篠山聡史 係長。会社が借り上げた独身用マンション住まい。城野美姫から昼食時の手弁当を作ってもらっている。別れた後は三木典子と付き合っているとも。
赤星雄治

東京の雑誌(「週刊英知」「週刊太陽」など)の記者。関係者の取材をする。狩野里沙子の高校時代の文芸同好会の同級生。
今も付き合っている。

城野実姫の同級生たち

・前谷みのり 犯人が城野美姫とする週刊太陽の編集部宛に抗議の手紙を出す。
・尾崎真知子・島田彩 美姫のこと、“犯罪をおこしそうな人”ランキング2位の生徒会誌を紹介。
・江藤慎悟 城野美姫が憧れたサッカー部のキャプテン。中2の時のイタズラが因??で交通事故で足を骨折。美姫に“呪いの力”の噂の原因を作る。

地元住民たち

・松田芳江
・谷村豊 夕子の祖父。
・八塚絹子 おばはん、話したくて仕方がない。
・谷村夕子 小中高時代の友達 アンとダイアナと呼び合う仲。
・松田フキ 昔氷沢の三人娘の一人。
・城野皐月・城野光三郎 城野美姫の両親
       皐月は“氷沢の鬼嫁”と呼ばれる。


読後感:
 

 ひとりの美人OLが全身10ヶ所以上を刺され、さらに灯油をかけられて殺される事件が起きる。やがて犯人は城野美姫という噂が立ち、警察も調べだすし、雑誌の記者が城野美姫についてどういう人かの取材をし、その人となり、背景が描き出される。

 変わっているのが、第一章では最初は事件の説明のためにパートナーとして育成されている狩野里沙子が同僚のみっちゃんに電話をする話の内容で情景を描き出す手法によっている。第二章からは赤星という雑誌記者が取材の形で相手に語らせることで犯人と目される人物の素顔、そして被害者の人物像を描き出そうとする。

 相手によって城野美姫という人物に対する思い入れ、憎しみ、関係のなさによる客観的感想と、はたして本当の人物像はどれが真実なのか。そんな取材を通してどんな記事にするかは全く記者、編集者、会社の思惑でゆがめられたり、同情的になったりすることになるであろうことは犯人と疑われている母親が批判しているところはその通りだろうと思う。

 最後に当事者の城野美姫が自分自身のこととして語るところは自分が犯人ではないと。そして犯人が逮捕された結果は・・・。

 その後の紙面はネットの書き込み、週刊誌の記事、新聞記事が添付のようにして掲載されている。はて小説としては異例のことで戸惑ってしまったが・・・。

 はてな犯人はどうして?と思い返して添付資料のような部分をよく見てみると、実は週刊誌の記事にしろ、新聞記事にしろ、第二章から第四章の取材した内容が週刊誌の記事として掲載されているのと、事件の新聞記事で犯人が捕まるに至った経緯が分かるようになっていた。

 また、作品の中で“マンマロー”と言うのが何だろうと思っていたら、ネットのコミュニティーサイトの名前でそこでやりとりがあったことも分かる。何か今までにない読書経験で得をしたような、割り切れない印象を持ったり複雑である。

 これも湊かなえという作家の特異な存在を感じさせる一面であろう。
 

  

余談:

 湊かなえの作品には、出てくる人の心情をみごとに表現して、醜い面、好意的な面それぞれを持ち合わせた他人の目をするどくついて、果たして世間とは酷くもあり、空恐ろしい面を持ち合わせていることをあぶり出している。対マスコミの印象も簡単には信用できないと改めて感じる次第。
背景画は雑誌記者のイメージをとらえて。

                    

                          

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