湊かなえ著  『 サファイア 』






                 
2012-12-25



作品は、湊かなえ著 『サファイア 』   角川春樹事務所による。

            


 
本書 2012年(平成24年)4月刊行。

湊かなえ:
 
 1973年広島県生まれ。2007年「聖職者」で第29回小説推理新人賞を受賞。同作を収録したデビュー作「告白」が08年「週刊文春ミステリーベスト10」、09年「本屋大賞」でそれぞれ第1位になる。著書に「少女」、「贖罪」、「Nのために」、「夜行観覧車」がある。
 

物語の概要  

 真珠、ルビー、ダイヤモンド、猫目石、ガーネット、ムーンストーン、サファイア。7つの宝石に込められたそれぞれの想い。あなたに返し忘れたもの、それは…。湊かなえが描く、待望の最新作。

主な登場人物:

<真珠>
平井篤志(33歳) ムーンスター(化粧品会社)のお客様相談係の室長。放火犯の女に呼び出される。
<ルビー>
わたし 瀬戸内海の小さな小島の実家に、3年ぶりに帰省した独身の女性。裏手に老人福祉施設が出来た。
<ダイヤモンド>
古谷治(おさむ) 自動車整備工場で働く50過ぎの独身。お見合いパーティーで栄養士を目指す山城美和と知り合いプロポーズ。
<猫目石>

大槻真由子
夫 靖文
娘 果穂

それぞれに秘密を持った家族、隣の坂口愛子の家の猫を助けたことから付き合い出し、秘密の情報が囁かれる。
<ムーンストーン>
堀端久美 中学時代に高坂小百合からイジメに救われ、以降は別々の方向に進む。今は弁護士になった久美。
<サファイア>
わたし(20歳) 貧しい家庭に育った私、一人旅で大学生の中瀬修一に出会い、付き合い出す。
<ガーネット>
わたし(紺野真美) 彼が亡くなってからのわたし。小さな食品会社に就職、小説を書いて応募。やがて「墓標」を刊行するまでに。麻生雪美という女優との対談で彼のことが・・・。


読後感:
 
 石にまつわる表題を付けた6つの短編集。それぞれ石の名前が関連して物語が展開される。
 読むに従って感銘も増していく様な配列に並んでいる。普通は最初と最後とかにウエイトがある感じなのに。本の題名の“サファイア”となっているのに納得。それをフォローするように“ガーネット”があるようだ。
 なかで興味を引かれた話に感想を一言。

<ルビー>

 瀬戸内海の小さな島の特殊な老人福祉施設の老人と実家の畑で仕事をする両親との交流を巡る素朴な営みが何となく幸せをもたらしてくれるようで、それは都会の今の現実の世界とはかけ離れた状況を悲しんでいるようだ。

<ダイヤモンド>

 ちょっとメルヘンチックで雀女の恩返しで危機を救われる中年を過ぎた男の悲哀物語。神の存在かちょっと現実離れしたお話。

<サファイア>と<ガーネット>

 幼い頃からモノをねだったこともなく、あまり身辺に注意も注がないで育ったわたしが、一人旅の喜びを会得、そこで出会った大学生中瀬修一との交わりのみずみずしさ。やがてその先には思いがけない結末が。

 つづく“ガーネット”では思いがけないことの内幕が開く。しかしそのことも彼の人柄が覗き見られ、石にまつわる人のとらえ方が人生を大きく変えることに気づかされる。

  

余談:
 
 
アクセサリーにしろ、物の価値、値段がいかにその人の生き方や価値観にまで関わっているのかを示すものであるかを改めて知らされる内容であった。
背景画は本書の内容からブルーサファイアをイメージして。

                    

                          

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