湊かなえ 『ポイズンドーター・
ホーリーマザー』



              2021-01-25


(作品は、湊かなえ著 『ポイズンドーター・ホーリーマザー』    光文社による。)
                  
          

 初出 マイディアレスト(「蚤取り」改題)「宝石 ミステリー2」(201212月)
    ベストフレンド          「宝石 ミステリー3」(201312月)
    罪深き女             「宝石 ミステリー2014夏」(20148月)
    優しい人             「宝石 ミステリー2014冬」(201412月)
    ポイズンドーター
    (「ポイズン・ドーター」改題)  「宝石 ミステリー2016」(201512月)
    ホーリーマザー           書下ろし
     2016年5月 光文社刊
 本書 2020年(令和2年)9月刊行。

 湊かなえ:
(本書より)  

 1973年広島県生まれ。2007年、「聖職者」で大29回小説推理新人賞を受賞。’08年、受賞作を含む連作長編「告白」でデビュー。同作で’09年、第6回本屋大賞を受賞。’12年「望郷、海の星」で第65回日本推理作家協会賞短編部門、’16年「ユートピア」で第29回山本周五郎賞を受賞。’18年「贖罪」がエドガー賞<ペーパーバック・オリジナル部門>にノミネートされた。他の著書に「高校入試」「豆の上で眠る」「山女日記」「物語のおわり」「絶唱」「リバース」「未来」など。

主な登場人物:

[マイディアレスト]

私=淑子(トシコ)

母が20代で産んだ子。東京のT女子大を出、化粧品メーカーに就職するも1年半勤務して辞めた。普通の人より少し想像力が強く、何でもないものでも、暗く、苦しく、吐いたり・・映像となって頭の中に広がっていく。私は40近くになるも、母の邪魔で恋人も居ない。
妹 有紗(アリサ)

母が30代で産んだ子。私より6歳年下。
母は私に対して厳しいのに、妹に対しては大様。妹は男関係も派手、お腹をはらませて実家に戻ってきた。

スカーレット 私が可愛がっている猫。
[ベストフレンド]

私=漣涼香
(サザナミ・スズカ)

第12回毎朝テレビ脚本新人賞に応募。優秀賞に。
内容的には最優秀賞と思われたが、審査員最年長の野上浩二の意見が採用され次点に。

大豆生田薫子
(マミュウダ・カオルコ)

6名が残った中で、最優秀賞となった。最優秀賞作品は映像化され、郷が担当することに。
直下未来
(ソソリ・ミライ)
二人の優秀賞の一人。
郷賢(ゴウ・ケン) 毎朝テレビドラマ制作部プロデューサー。
[罪深き女]

私=天野幸奈(ユキナ)
母親

木造2階建ての「パールハイツ」103号在。
・母 未婚のまま私を産み、保険の外交員。
私に男友達の交際を許さぬ。

黒田正幸
母親

「パールハイツ」203号に私が小学6年になったとき引っ越してきた、小学1年生だった。20歳の時家電ストアで刃物を振り回し、死傷者15名を出し逮捕される。
・事務用品を扱う会社で働く。

[優しい人]

私=樋口明日実
  
(アスミ)
母親

バーベキューの時、奥山友彦に優しくしてあげたら好きになられてしまった。徳山淳也と付き合っていると告げると・・・。
・母親 私に対して優しい子であることに期待。

奥山友彦

バーベキュー広場で友彦(25歳)の遺体が発見される。
防犯グッズを取り扱う会社の2年上の先輩。おとなしく真面目な人。高級菓子を差し入れたりの行動に陰ではキモいと囁かれている。

幸直 私が幼稚園の時の年長組の男の子。鼻水を垂らす正直と手をつなぐのをいやがる子たちの中、私が風邪を引いたときは流石に嫌だと言ったら・・・。
修造

小学4年の時の同じクラスの男の子。恥ずかしがり屋、口下手で、大人しい子。虚弱体質で、ゲロをよくする。
ゲロ掃除係に学級委員長の千紗ちゃんや私も。

唯香(ユイカ)

小学校に上がるまで同じ団地。明日実のことを「昔から地味な男の子から人気があったよね。明日実は優しいから」と。

徳山淳也(ジュンヤ) 高校時代の同級生。
[ポイズンドーター]

私=藤吉弓香(ユミカ)
母親 =あの人

あの人の期待を裏切り、女優となる、33歳。
・あの人 弓香が3歳の頃、夫を交通事故で亡くし、不自由させることなく育てる。母親の仕込みは弓香にとって「毒親」相当。

前川理穂
<結婚して 野上>

中2で同じクラス。二人で図書委員に。
理穂の母親の差し金で次第に私と距離を置くように。

江川マリア

私が中学入学の時仲間はずれになっていた時、マリアも一人でいた。
顔は美しい顔だったが、不潔で遠ざけられていた。
私は遠足の昼食時間一人になるのが嫌で、マリアに接近し次第に親しく距離を縮めたが、あの人が口を出してきて・・・。

[ホーリーマザー]

野上理穂
娘 志乃
義母 

母親の反対を押して結婚。弓香とは中学生の頃一番仲が良かった頃もあったが、親友だと思ったことも、顔を見るのも嫌だった時期もある。そして弓香と対決することに。
・義母(夫の母親) 市役所勤務で保育所の受付担当であったが、保育所の数が少ないことから、自分で託児所を立ち上げた。藤吉佳香が娘の弓香によく利用していた。

藤吉弓香(ユミカ)
母親 佳香
(ヨシカ)

女優の弓香はテレビや本で、母親のことを毒親と知らしめる。
・佳香 理穂の義母の友人。あれだけ謙虚で、一生懸命頑張ってきた人(佳香のこと)が悪者にされることを義母は怒っている。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 母と娘。姉と妹。男と女。ままならない関係、鮮やかな反転、まさかの結末…。あなたのまわりにもきっといる、愛しい愚か者たちが織りなすミステリー。人の心の裏の裏まで描き出す、極上のイヤミス6編。

読後感:

[マイディアレスト] 隣町では連続して妊婦暴行事件が発生していて、夜道の一人歩きは恐れられている。お腹を膨らませた妹のわがままで夜コンビニに買いに行くことから、私がお供することになったが、可愛がっているスカーレット(猫)が何しているのを見て・・・・。

[ベストフレンド] 最優秀作品賞になった大豆生田薫子は実話で、私の作品の方が、郷が囁いた「漣さんだと思っていたんですけどねえ」の通り、大豆生田薫子作品の映像作品は酷い出来。 せっかくの機会と、三人はメール交換し、互いに情報交換をすることに。
 私はせっせと郷にプロットの提供をし、大豆生田薫子は・・・。

  [罪深き女]上の階の正幸が寒い季節、外に出されていたことから近づきになる。その後の展開から自分の環境、正幸の立ち位置から、お互い共感を持ち始めるも、正幸の母親が襲われて再婚話が破綻。引っ越すことに。その後再会したとき私の幸せの近況を伝えたことで裏切られたと・・・。

 [優しい人]会社の先輩奥山友彦が遺体で発見された。奥山友彦の母親は「あの女は悪魔のような女」と。ただ私がバーベキューで優しくしたら、好きになられただけ。
 明日実の幼稚園から中学、高校などの様子が証言される中、明日実は「私は彼らに優しくしていたのではなく、ただ、興味がなかっただけ。その場限りの付き合いだと割り切っていただけ。最初から何もしなかった人以上に傷つけてしまうことになる。」と恋人の徳山淳也に告げられる。

「ポイズンドーター」私と理穂の仲はあの人と理穂の母親の差し金で縁遠く。一方、中学でやはりひとりぼっちの江川マリアと親しくなっていったが、やはりあの人の言うことを聞かざるを得ない私は以前の仲間のグループに戻れるよう請い、江川マリアに一緒に食べられないと告げる。江川マリアはその後・・・。

[ホーリーマザー]理穂の義母は弓香の母親とは友人で、その人となりを知っていて、弓香が毒親と世間に知らせることに異論を持っている。理穂も弓香のことをうっとうしく思っていて、江川マリアの墓の前でマリアの自殺の原因を告げる。

6篇を通じて言えることは、物の見方には表と裏があり、自分の勝手な見方で評価してしまっていること。特に母と娘の関係はなかなか難しいと言うことか。
6篇の中でも[ポイズンドーター]と[ホーリーマザー]は逆の立場での母と娘の関係が語られていて、本作品の題になったのもうなづける。


余談:

 文庫本なので解説が巻末に付いていて毎回楽しみの一つである。
 今回は清水友佳子(ゆかこ)(脚本家)の解説で、著者の湊かなえの人柄が述べられていて興味深い。
 現場で「ナイフのように鋭くて怖い人」というイメージを抱いていたのが、現れたのはふんわりと柔らかい笑みをたたえた優しそうな女性。全然スナイパーじゃなかった・・・と。

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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