湊かなえ 『 未来 』



              2021-11-25


(作品は、湊かなえ著 『 未来 』    双葉社による。)
                  
          

 
本書 2018年(平成30年)5月刊行。書き下ろし作品。

 湊かなえ
(本書より)

 1973年広島県生まれ。2007年「聖職者」で第29回小説推理新人賞を受賞。08年同作品を収録したデビュー作「告白」は「週刊文春08年ミステリーベスト10」で第1位、第6回本屋大賞を受賞。また、14年には、アメリカ「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙のミステリーベスト10に、15年には全米図書館協会アレックス賞に選ばれた。12年「望郷、海の星」で第65回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。16年「ユートピア」で第29回山本周五郎賞受賞。18年「贖罪」がエドガー賞(ペーパーバック・オリジナル部門)にノミネートされた。

主な登場人物:

[章子]

佐伯章子(あきこ)
<わたし><私>
パパ 良太
ママ 文乃

早くパパを亡くしたが、パパに対する思いは強い。そんな章子(10歳)の元に20年後の章子からの手紙が届く。
・パパ 親の反対を押し切ってママと遠くに来たが、わたしが小4の時亡くなる。大好きなパパ。両親とは交流を絶っている。
[エピソードV]に。
・ママ 子供の頃とても辛い思いをしたことがあり(パパの話)人に戻ったり、人形に戻ったりの状態に。人の時はママの心はガラス細工のような物。人形になって心を守るために石のようなかたい物になる。

樋口絹代 パパ(良太)の母親。良太の死後、突然訪ねてきて、良太の面影を残す章子を引き取りたいと。

後藤実里(みのり)
母親
父親

・実里(みのり) 小5の時学級委員長。小6では別の組に。
高校2年生で再び同じクラスに。イジメの首謀者。スピーカー。
・両親 PTAの役員。実里に勝とも劣らずモンスター並み。

須山亜里沙(ありさ)
父親 

小学5年生でのクラスメイト。章子は当初は苦手な相手。無口、大人っぽい。高校2年生の時同じクラスに。[エピソードT]
・父親 レストラン「HAYASAKA」のランチ時に手伝いに。

小林<コバ>ちゃん 高校で章子と同じ文芸部の友達。
本谷くん 高校2年の時同じクラス。潔癖症の子。

篠宮真唯子先生
(しのみや・まいこ)

小4時の担任。その後結婚して東京に? 悪い噂も・・。
[エピソードU]

林優斗(ゆうと)先生 大学卒業したばかりの小6の担任。ママのこと心配、何かと手助けに自宅を訪問、やがて問題に・・・。
仙道先生 小6の時の学年主任。
大原先生
早坂

レストラン「HAYASAKA」の店主。ママと一緒に事実婚。
フランス仕込みの料理の価値にこだわっている。

智恵理

高校生の亜里沙が慕っている定時制大学の先輩。
章子にとってもお姉さんのような存在。

[エピソードT]

須山亜里沙(ありさ)
<あたし>
父親
母親
弟 健斗

優しいお母さんと凶暴な親父(本当は優しい人とお母さん)の間で悩んでいるあたしの存在。章子や実里との様子は[章子]に。
・両親 美容師だった父が、母親の金属加工会社で指を切断した父親は母親と結婚。あたしが小学3年の時母親病死。父親と3人暮らし。父親の暴力始まる。
・健斗 4階建ての屋上から飛び降り自殺。
・瑞枝
(みずえ)おばさん 母の妹。

智恵理(ちえり)

一緒の県営住宅に住んでいたことあり。清瀬高校の定時制に通う。
あたしより2つ年上のお姉さん的存在。何か事情持ち。
・まどかさん 智恵理の親友。

早坂 フレンチレストラン破綻後、あたしの父親は早坂と人材派遣会社立ち上げ。その前早坂は、あたしの父親の会社でアルバイトしていた。

・篠宮先生 小学4年生の時の担任。
・林先生 小学5年生の時の担任。

[エピソードU]

篠宮真唯子(まいこ)
<私>

清瀬第二小学校の教師。佐伯章子の担任に。
貧しかった大学時代、恋人の原田君には知られたくないバイトに後悔の念が。

君江 真唯子が両親とも出て行き、一緒に暮らしていた母親の実家のおばあちゃん。おばあちゃんは私に公務員になれと。
原田くん 映画好きの、大学は違うが真唯子の恋人的存在だった。
[エピソードV]

樋口良太
<僕>
母親

醜い顔の持ち主、柔道のおかげでイジメに遭わず、石ころのような存在に。本が好きで、中学2年生の時1作目の小説を、高一の時2,3作目を。森本との出会いが・・・。
・母親 森本の父親の後援会に入っている。

森本誠一郎<俺>
妹 真珠
(まじゅ)
父親
母親

高等学校2年生の時出会う。美しい容姿、僕に近づきある計画を・・・。
家庭内は悪魔の住処?
・真珠 中学生。
・父親 県議会議員。
・母親 3年前事故(?)で亡くなる。

[終章]
樋口章子
須山亜里沙

亜里沙とふたりドリームランドに。
入場を先に延ばし、ちゃんと話を聞いてくれるおとなに助けを求めようと。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 「こんにちは、章子。わたしは20年後のあなたです」。ある日、突然届いた一通の手紙。送り主は未来の自分だという…。『告白』から10年、湊ワールドの集大成。書き下ろし長編ミステリー。

読後感:

 445ページにわたる長編の流れを理解するには、[章子]の章で登場する佐伯章子なる良太と文乃の娘の話の中に中心は集約されていた。
 続くエピソードのTからVで登場する須山亜里沙を中心に智恵理、そして早坂のからみ。
[章子]の章に出てくる篠宮先生にまつわる話では、先生になる前の大学時代の原田くんとの交際、そして[章子]の章での退職を余儀なくされた事情が明らかに。そして佐伯章子と須山亜里沙に出された三十年先の手紙の出所が明らかに。

 そしてエピソードの中で樋口良太と親友であった森本誠一郎との壮絶な戦い?そして森本誠一の妹真珠との秘密が[終章]で良太と文乃との真実を予感させる。
 
 物語を通して流れているのは、どろどろした家庭内の悪夢のような出来事と、それを精算しようと戦う人間の姿が生々しくも、心温かくも描写されていて、読者は引き込まれてしまう。


余談:

 帯文に記されているのが、デビュー作「告白」から10年、湊ワールドの集大成と。
「告白」は12年前に読んでいたが、本の装丁からして手に取ってみたくなる本で、ずっしりとした重みに、作品の重みも感じていた。読み終わって感動とだけは言えないものが残った。

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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