湊かなえ著 『豆の上で眠る』
                





              2014-10-25


 (作品は、湊かなえ著『豆の上で眠る   新潮社による。)

               

 初出  「週刊新潮」2013年2月14日号〜9月19日号。
 本書 2014年(平成26年)3月刊行。

 湊かなえ:(本書より)
 
 広島県生まれ。2007年「聖職者」で第29回小説推理新人賞を受賞。同作を収録する「告白」が2008年に刊行され、同年の「週刊文春ミステリーベスト10」で国内部門第1位に選出、2009年には第6回本屋大賞を受賞した。2012年「望郷、海の星」で第65回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。他の著書に「少女」「贖罪」「Nのために」「夜行観覧車」「往復書簡」「花の鎖」「境遇」「サファイア」「白ゆき姫殺人事件」「母性」「望郷」「高校入試」がある。
 

物語の概要: 図書館の紹介文より 

「お姉ちゃん。あなたは、本物なの」…。13年前に起こった姉の失踪事件。大学生になった今でも、妹の心には「違和感」が残り続けていた。「価値観」を激しく揺さぶる長編ミステリー。

主な登場人物:

安西結衣子(20歳)
(私)
姉 万佑子
母親 春花
父親 忠彦
(猫 “カサブランカ”)

大学生、喫茶店<金のリボン>でアルバイト。2度目の帰郷、13年前の姉万佑子の失踪事件を思い出す。当時小学1年生。
・万佑子 小学3年生の8月5日神社から一人で家に帰る途中で姿を消す。2年後発見されるも・・・。
現在自宅から県内の大学に通う。

母方の祖父母
妹 冬美おばさん

祖母のノートに記されていた。本当の万佑子なのかと。
でも最後にはそのことを含めて戻ってきた姉のことをかばっている様子がうかがえる。

柿原風香 当時同じ小学6年生、図書委員。万佑子をスーパー<ホライズン>で白い車の後部座席に坐っているのを目撃したと。

山本奈津美
(通称 なっちゃん)

当時同じ小学6年生。万佑子の目撃情報を提供。県営住宅の先へ、白い車、万佑子口をガムテープで。“バラしたら殺すぞ”と言われ・・。 風香ちゃんは信用しちゃダメと私に。
池上さん 斜め向かいのおばさん、看護士。
沙紀ちゃん 喫茶店<金のリボン>の結衣子のバイト仲間。
広永

県営住宅に住む住人で息子は引き籠もり中。
母がやっと犯人を見つけたと私に猫のカゴを渡し、万佑子を捜させに行き、私は怖い目に遭いそうに。

岸田弘恵
娘 遥
(ハルカ)
弘恵の姉 奈美子
(弘恵と2つ違い)

ハルカは姉の友達。私が2度目の帰郷で新幹線の駅前で姉と一緒にいるところを見かける。

補足:弓香ちゃん行方不明事件 万佑子の失踪事件の5年前に山口県で起きた事件。
忽然と姿を消したことから“神隠し”と週刊誌では。

読後感:

 現在の状態がときおり、13年前の姉の万佑子の失踪事件を振り返る描写にかってにちょくちょく入り込み、違和感を感じながら展開していく。(この著者の作品の特徴か?)
 母親の行動にちょっと異常なところがあるのが気になるところ。万佑子を可愛がるあまり、結衣子にとって差別をされているのか、はたまた自分(結衣子)は本当の子供ではないのか?この辺りもミステリアスなところ。
 ただ扱っている小さい女の子の誘拐(?)事件を扱っているだけに現在にも起こりうる切実な問題である。
 
 後半、万佑子が行方不明になってから丸2年が経ち、姉が見つかった後の展開はどういうわけか私(結衣子)は姉が別人ではないかとの念が抜けず、母方の祖父母や冬美おばさんも何となく疑っているようでもあり・・・。分かっていても姉妹と信じなければと思うところもあるし、悩みつつ思い切った手を打っていたことに意外性を感じた。

 ラストの真相は何だか頭が混乱してきて再三読み返さなくてはならなかった。そんな感じで本書の帯文に記されている“「価値観」を激しく揺さぶる、究極の謎”にちょっとちょっとと言いたくなってしまった。
 なっちゃんと風香ちゃんの対比もラストで・・・。色々と趣向が凝らされている。

   
余談:
 
 本作品を読んでいると角田光代の「八日目の蝉」を思い出した。母親とさらってきた小さな子供への愛情が切なかった。今回の岸田弘恵の行為は話がそれほど中心ではなかった分感情移入するほどではなかったが、こういう問題はやはりあってはならない。

         背景画は主題の小学生の失踪事件の雰囲気から。



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