南杏子 『ディア・ペイシェント』


              2021-07-25


(作品は、南杏子著 『ディア・ペイシェント』    幻冬舎による。)
                  
          

 
 本書 2018年(平成30年)1月刊行。書き下ろし作品。

 南杏子
(みなみ・きょうこ)(本書より)
 
 1961年徳島県生まれ。日本女子大学卒。出版社勤務を経て、東海大学医学部に学士編入。卒業後、都内の大学病院老年内科などで勤務したのち、スイスへ転居。スイス医療福祉互助会顧問医などを務める。帰国後、都内の終末期医療専門病院に内科医として勤務。2016年「サイレント・ブレス」でデビュー。  

主な登場人物:

真野千晶 医療法人社団佐々井記念病院(川崎市にある中規模の市中病院)の常勤内科医(消化器が専門)、36歳。半年前に大学病院から来たばかり。
浜口陽子

千晶より6歳年上の先輩、42歳。専門は心臓病。実家は青森。
本院に来る前は東北大学病院で循環器内科医として働いていた。

金田直樹
<渾名 カネゴン>

千晶と同じ内科所属の2年上の先輩。
蓮実勇夫(はすみ) 警備員、60代半ば。神奈川県警暴力団対策か勤務、5年前定年退職し、院長に拾われ本院に。
佐々井記念病院関係者

・佐々井宗一郎 理事長兼院長。人の良い3代目。脳神経外科医として知られる。
・高峯修治 四菱銀行出身の事務長。病院経営の主導権を握る。
・沼田晋也 事務局主任。
・渡辺美咲 入職2年目の事務職員。甲府出身。
・瀬戸翔太
(しょうた) 介護職員、26歳。

真野万里
両親

千晶の4歳下の妹、実家(山梨富士五湖近く)で父親の診療所の医療事務を一手に担っている。
・父親 あと3ヶ月で診療所を辞めるつもりの74歳。
・母親 認知症で1年前から大月市内の施設に。

座間敦司(ざま・あつし)

患者クレーマー、49歳。認知症の母親を介護しながらの二人暮らし。千晶に対し色々難癖をつけてくる。

吉良

システマ教室の講師。外見はKGB出身のプーチン大統領のように冷酷かつ冷徹そうに見えるが、柔道、合気道、「カリ」というフィリピン武術など、世界各地の格技を試し、システマにたどり着く。
千晶、システマの呼吸法でクレーマーに対してリラックスして対応することを学ぶ。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 病院を「サービス業」と捉える佐々井記念病院の常勤内科医・千晶は、押し寄せる患者の診察に追われる日々を送っていた。そんな千晶の前に、執拗に嫌がらせを繰り返す患者・座間が現れ…。現役医師が医療に携わる人々の苦悩と喜びを綴る、感涙長篇。

読後感:

 読み始めて気がつく。たしかNHKテレビのドラマ10として見たはず。印象に残っているのは、陽子先生役の内田有紀、座間役の田中哲司の個性と黄色ブチ眼鏡、千晶役は誰だったっけ。そうだ貫池谷しほりのちょっと頼りなさそうな姿。金田役の、顔は知っているが名前は知らないけれど、小説の個性に合致した人だったと。

 小説では色んな患者との対処や病気、その時の処方、患者の反応が出てくるのも参考になるが、一つは座間というクレーマーに恐怖を覚える千晶が、先輩の頼りになる陽子先生のアドバイスやコミュニケーション、金田先輩の辛辣で本音をぶつけている姿に救われているが、陽子先生の明るさの中に、悩みを持っている気配を感じていたのが、突然現実となって驚かされることに。

 一方で、実家の家庭の事情が千晶を悩ませている。母親は認知症で入院しているし、父の診療所はあと3ヶ月で辞めることで、妹の万里に早く戻ってきて引き継ぐようにと催促されている。
 そのことでも母が亡くなり、実家での父や妹とのやり取りに父親の真意、万里の決心、はては千晶が悩んでいた医師と患者の向き合い方に対する父の言葉で、何か吹っ切れることに。
 さて、座間のクレーマー行動の真意は、蓮実の話、金田の説明で明らかにされ、千晶は新しい気持ちで医師としての仕事に励むことになる。


余談:

 現在の新型コロナでの状況報道を見るにつけ、医療関係者は患者の命を救うという使命感で働いているのに、患者側の言いがかりや、訴訟に神経をすり減らすこともあることだろうと思うと気の毒の限りである。患者側も相手のことも考えて言動するようにしたいもの。

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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