主な登場人物:
藤堂伊作
(父親 久助)
(兄 藤作)
(妻 時枝)
長女 雪江
息子 達之
次女 松江
長男 誠市
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14歳で京都に丁稚奉公に、その後生命保険の勧誘員を務め、69歳でひとり若狭のカナゴダニに戻って田舎暮らしを始める。妻の時枝には3年前に先立たれる。
父親は木挽き職人であった。兄はフィリピンで戦死。
雪江は離婚し、枚方に息子の達之と暮らしている。
松江は未婚を通すつもりで京都にいる。
誠市は岐阜で、3児をもうけ自動車の販売会社に勤務。
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金何平(キムハピョン)
城戸瀧子
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伊作の隣に住む在日韓国人。戦後返る所がなく若狭に住み着き、戦争未亡人の城戸瀧子の求めに応じて農作業を手伝い、瀧子と仲むつまじく暮らす。 |
真田信夫
栗林律子(50歳位)
黒井カズコ(30代)
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京都修学院の陶芸家。伊作の赤土を待つ陶芸家がふえた。
栗林律子:真田が指導している陶芸教室のメンバー。
黒井カズコ:伊作の所から出る赤い土を使っての陶芸に打ち込むため伊作の元に通うことに。
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物語の概要: 図書館の紹介より
自然や動物との共存を断ち切って自らの繁栄のみを追い求めてきた人間たち。若狭で土を掘る老人と孫の交流を通して、いま一番大切なものは何かを問いかける長篇小説。
いつのまにか姿を消した亀や蛍。失ってきた美しいものの象徴ともいえる生きものたち。その復活に情熱を傾ける老人の姿に強い明日への希望を託した根源的な愛の物語。
読後感:
69歳で故郷の若狭に返ってきて、残りの人生をひとり赤土掘りをする。この地に溝川を引き、亀やフナの住む池を作るのを夢見る。孫の達也と交流しながら、自然の大切さを語っていく伊作の姿は、昔の小さい頃の自然環境を思い出させるに十分である。
そういえば昔小さい頃、住んでいた西宮は、綺麗な川が流れ、田圃にも小さな生き物が沢山いたなあとなつかしさが甦ってくる。
そして語られている今の姿(今と比べて20数年ほど前)が、ちっとも変わらずに、植林の問題、山の動物が里に出てきて危害を加えること、渡り鳥が少なくなっていることなど。
そしてその当時若狭に原発の3号、4号の増設で人口以上の人たちが働きに来ていて、賑わっていた時代を映しているのがなんとも皮肉なことである。
作品の中では随所に自然を大切にすることの必要性、そして人の生き方を示唆する表現が出ていて著者の主張が共感を呼ぶ。
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