初出 1980年1月から1980年10月「朝日新聞」朝刊。 1980年11月(上)、81年1月(下)朝日新聞社刊。 本書 1996年(平成8年)4月刊行。
工藤竹一 先妻 糸子 後妻 由枝 先妻の子 高志 後妻の子 美代子 父親 工藤貫一(没) 母親 みつ (没)
竹一:長男、兄弟姉妹5人の中で誰よりも本が好き。父親の家業(オンボー)がいやで弟の桐二に任せ、20歳の時に東京に家出。故郷は阿慈町(青森と岩手の県境、海沿いの仮想の町)。 糸子:15年前、高志が2つの時に別れる。派手好みで虚栄心強く、オンボーのことを知り嫌う。 高志:高校2年生、担任を殺傷したことで退学処分に。 由枝:高志が先生を刺したこと継母への当てつけと。 美代子:高志とは仲良し。
姉 百合 子供 鉄夫 娘 和子
妹 藤子 夫 石山佐吉 息子 松男
母親の優しい所を貰っている。亭主は一関で役所勤め。 一番幸せに暮らしている? 松男:高校1年生。
弟 桐二 嫁 なつ子 娘 文子 男 3人
竹一の3つ年下。阿慈町に残り父の後を継いでいる。 すぐ隣りに蓮昌寺の謙堂和尚が居る。 竹一は、高志に父の故郷を見せ、この後どうするかを考えさせるために阿慈町に連れてくる。
弟 梅三 息子 3人 利行 高3
<補足> オンボー:火葬場で働く人のことを地元ではそう呼んで一段低い人間だという眼でみられた。
読後感:
父親はどうやって息子の思いを理解し得たか、息子のその時の思いはどんなものであったのか、学校側はどんなふうに扱ったのか、家庭内での母親(姉の勝枝を含めて)はどんな風に振る舞ったのか。なかなか興味深い問題であった。 工藤家の家庭も複雑な人間関係だったし、それに対して息子に寄り添い、自分の兄弟姉妹との交わりや現在の生活ぶり、そしてなにより、もっとも父親の血に流れている根本の生き様、生きた土地の故郷、なりわいを見せ、感じさせることで高志に今後のことを自分で決心させる方法で心の変化をもたらした。