三上延著
                   『ビブリア古書堂の事件手帖』
                              &<続2>




                      2012-12-25


(作品は、三上延著『ビブリア古書堂の事件手帖』および続2 メディアワークス文庫による)

         

 本書 2011年(平成22年)3月刊行。

 三上延:(本書より抜粋)

 電撃文庫「ダーク・バイオレッツ」にてデビュー。ホラーからファンタジーまで、幅広い作風で縦横に活躍中。丁寧に紡がれる物語には、根強いファンが多い。

主な登場人物:

五浦大輔(俺) 大学卒業し大船の実家に住み就活中。「ごうら食堂」を営む祖母から小学校に上がる直前のできごとから本を読めない体質に。祖母もなくなり母と暮らす(父は生まれる前に他界)。

篠川栞子
(しのかわしおりこ)
妹 文香
(あやか)

北鎌倉駅ホーム近くの古本屋「ビブリア古書堂」の若い女店主。
文香は女学生、店番の手伝いもやる。

志田 せどり屋(古書店で安く売られている本を買い、高く転売する人)。得意ジャンルは絶版文庫中心。
笠井菊哉(きくや)

志田の同業者、笠井堂(ネットでの屋号)の店主。
あだ名を“男爵”と言われる。

小菅奈緒
西野

第二話で志田から本を盗んでいった女学生。
西野は男子学生。小菅がバス停で西野にプレゼントを渡すが。
(第二話)

坂口昌志
(まさし)
妻 坂口しのぶ

50代後半のスーツ姿の客。ヴィノグラードフ・クジミン「論理学入門」(青木文庫)の古い本を売りたいと持ち込む。
妻のしのぶは30代。その後夫が本を売りたいと持ち込まなかったかと聞き、売らないと。(第三話)

大庭葉蔵 篠川店長に太宰治の「晩年」アンカット初版本を譲って欲しいと脅迫まがいの執念で迫る。(第四話)
<続編2>

姉 小菅奈緒
妹 小菅結衣

読書感想文で担任から親に「不安定な年頃だから少し気を付けた方がよい」と注意を受けた妹のことで、俺に相談が持ち込まれる。
・奈緒 前回話題になった女子生徒。
・結衣 聖桜女学園に今年入学の中一の女学生。
(第一話)

澤本
高坂晶穂

久しぶりに居酒屋で逢った三人、俺と晶穂の昔のことで疎遠になってしまったわけが・・・。
・澤本 俺の高校時代3年間同じクラスの友達。
・晶穂 同じく同じクラスで仲の良かった女友達。資産家の親とは意思の疎通がうまくいっていない複雑な家庭の子。
(第二話)

須崎

足塚不二雄「UTOPIA 最後の世界大戦」の本にまつわる秘密。
栞子の母の実像が明らかに。
・須崎 店に買い取り依頼に持ち込んだ本を残して姿を消す。
(第三話)

読後感:

 一種のミステリー調でもあり、主人公のビブリリア古書堂の店主の性格は古書のことに関しては博識の持ち主で目利き、 話しぶりも自信に満ちた調子なのに、 それ以外のことに関しては内気で人とも話し下手の変な性格。 それが美人だから、もう一人の主人公五浦は幼い頃のとらうまで本を読めない体質であるが彼女との話の聞き手として関わりたくてしようがない。
 ちょっと風は、北村薫の極日常のことをテーマにしたミステリーと、教養溢れる上品な作風を彷彿とさせる。
 うれしいことに読書に興味があるため、本にまつわる色んな話は楽しくてしようがない。
 そんななか、四話構成のミステリーがお互い登場人物は関連づけられながら展開する。

<続編2>
 
 第一話 アントニイ・バージェンス「時計仕掛けのオレンジ」にある古い版と完全版のお話のような、 本に歴史がある話を知るとぞくぞくしてしまう。 その事情を知るとなおさらその作品を読んでみたくなる。

 篠原栞子の解き明かす話もなかなか。

 第二話 福田定一「名言随筆 サラリーマン」の話では司馬遼太郎の本名が福田定一であったこと。そしてその本にまつわる、伝えることの下手な父親と娘の思いが切ない。
 
 第三話 栞子が母親を嫌う理由を知ることになる俺。 そして栞子が放った言葉に茫然とする俺の気持ち。 この後どうなるのだろうか?さらなる続編が生まれてくるのか?
 でも古書にまつわるネタは早簡単にころがっていないのでは? でも期待したい。

  
余談1:

 舞台が北鎌倉の駅裏にある古書を扱うビブリア書店(あとがきにあるように古書店は勿論実在しない)、そして大船駅周辺とくる地元の地理なので、いっそう身近に迫ってきてたまらない。 なんで身近な土地が舞台だとこう感じるのが人情。

 太宰治の「晩年」、 小山清の「落穂拾ひ ・ 聖アンデルセン」、 梶山季之の「せどり男爵数奇譚」を機会を見て読まなくちゃあ。 そして夏目漱石の「それから」も再読を。

余談2:

 あとがきを見て著者の母校のことが記してあり、興味を抱いて調べてみた。ネットには北鎌倉駅から母校までの徒歩道がフォト付きで詳しく載っていてなかなかおもしろかった。眺望も良さそうで散歩にでも行ってみようかな?
 身近な所の話でもあり、親近感があって楽しい読み物であった。
背景画は、北鎌倉駅の風景。 作品中では駅の反対側の通りにビブリア古書堂が存在していることに。