感読後感:
主人公の利根慎一の心を通して語られる物語。女友達の鳴海との仄かな気持ち、春也と友達でありながら、鳴海が春也と心を通じ合わせると、それに対するやっかみ、母親が鳴海の父親との交際を密かに疑い、自分に知られないよう行動していることに対して複雑な思いを抱く。
少年時代の複雑でいて割り切れない気持ちが、色んな面を感じてどう行動していいのか分からない状態、そんな心情がそこかしこに表現されていて、なんと少年の気持ちの難しいことか。
祖父が起こした海の事故で鳴海の母親が巻き込まれて亡くなり、祖父も片足を切断する大怪我をし、びっこで生きている姿、そしてその死亡させてしまった家の娘(鳴海)と仲良くなって、さらに自分の母親が、春海の父親と交際をしているらしいと気づく。
三人(慎一と春也と鳴海)での秘密の山の上の神事の場所、そこで行うヤドカリの飼育とヤドカミ様への願いの神事と、その結果の実現が本当なのか、意図して行われたものなのか、また学校で慎一に届けられる鳴海との関係を揶揄する手紙、その犯人は誰なのか、ミステリアスな展開も読者を惹きつける。
また、同じ転校組の春也と仲良くなるも、春也が何か家庭内でいじめを受けているらしいことに気がつく。まわりで起きる出来事は慎一にとって心を砕く出来事ばかり。
次第に三人を取り巻く環境が変化していく中で、最後の神事でどういう結果へと導かれるのか? 不穏でいて少年の切ない気持ちがひしひしと伝わる展開に引き込まれてしまった。
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