道尾秀介著 『背の眼』



              2018-05-25


(作品は、道尾秀介著 『背の眼』    幻冬舎による。)

          

 
 本書 2005年(平成17年)1月刊行。 

 道尾秀介:
(本書より)
 
 1975年東京都生まれ。本書がデビュー作となる。
     

主な登場人物:

道尾 <私> 福島県白峠村に旅行したときに村で子ども4人が神隠しにの話を聞いたことから友人の真備に10年ぶりに会って話す。そして三人(私と真備と北見凜)で白峠村を訪れる。
真備庄介(まきび)

私の大学時代の友人。町田市で「真備霊現象探求所」を開設。
本物の霊現象を見つけるために。
同級生の北見玲と結婚。しかし5年前交通事故で亡くなる。
真備は大手製薬会社の研究員であったが辞めて、事務所を開く。もう一度会いたくて・・。

北見凜
姉 玲(没)

1年ほど前から真備の元で助手を務める。霊能者だが、極力避ける。
・姉の玲とは7つ違い。

歌川春芳(はるよし)
妻 秋子(没)
息子 秋芳(没)

“あきよし荘”の気さくな宿の主人。脱サラして福島県白峠村で小さな宿を営む。
広重の「東海道五十三次」の絵のセットを持つ。
・妻の秋子 こちらに来て5ヶ月で骨腫瘍で病死。聾者。
・秋芳 8歳で白早川で水遊び中亡くなる(殺された?)。

糠沢長次(ぬかざわ)
孫 耕一

亡くなった孫の耕一の祖父。二人暮らしだったが、亡くなった河原で日夜川を見つめている。天狗の面作りの腕のいい職人。

呂坂幹男
母親 寿々
(すず)

自殺願望のある男。自殺を目撃した溝之木亮平は遺書を持ち去る。・母親は痴呆で(?)自殺。

溝之木亮平(りょうへい)
母親 まさ江

不登校の小学3年生。霊感のような物を持つ。母親の干渉を嫌っていた。
・母親は賃貸住宅の大家。呂坂幹男はそこの住人。

I駅の駅員 福島県、白峠村行きのバスが出ている。道尾に神隠しの話をする。
行方不明の小学生

・最初の一人 糠沢耕一は天狗の面を付け首だけ白早川の下流で見つかる。
・山岸勇人(9歳) 白峠村の住人。
・森木一雄(7歳) 白峠村の隣の愛染町で。
・田倉翔(8歳) 白峠村の白早川の上流で。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)
 
 ホラー作家の道尾が、旅先の白峠村の河原で耳にした不気味な声。その言葉の真の意味に気づいた道尾は東京に逃げ戻り、「霊現象探求所」を構える友人のもとを訪れる…。第5回ホラーサスペンス大賞特別賞受賞作。  

読後感:

 特に前半の部分まではミステリー作品としての、そしてひなびたローカルな旅情を感じさせる内容と暖かみのある人情味豊かなやりとりに惹かれる。
 それからはその謎解きにもいかにも賞を受賞にふさわしいと思わせる内容に引き込まれた。

 謎解きに関してはホラー作品特有の内容ではあろうが、語る側の人物(真備)と聞き手である友人のホラー作家(道尾)と真備の助手である北見凜の人物の魅力がいい。そしてそれに劣らず「あきよし荘」のご主人(歌川)の人柄が好ましい。
 こういう登場人物達の織りなす展開に面白くないはずがない。

 殺人犯人のことはさておいて、登場人物の少なさにこの中に犯人がいるのではないかとの思いがよぎるったが・・・。
 それぞれの人物に過去が隠されていて次第に明かされていくのと、ホラーの作品らしく霊とか多重人格の話題がでてくるとホラー作品と分類されてしまうが、素直な気持ち、普通のミステリー作品と感じてしまうほどまともな(?)作品と思う。
 
余談:

 面白い内容があった。
・一つは歌川広重の「東海道五十三次」の版画絵に関して改めて意識してみる事に。
 五十三枚でなく五十五枚あるとは。
 五十三の宿場の情景に、出発点である日本橋と終着点である京都の情景を合わせて五十五枚。
・そして”逆さを見る”ってのが静岡の方言と。そのことに関してその絵が作品のヒントになっていた。

  

背景画は、森・木をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

           
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