読後感:
それぞれの物語には童話作家となった卯月圭介とその妻が作った絵本のはなしが取り込まれていて、現実の世界と物語の世界が融合して夢のような世界が時に展開している。
中でも<物語の夕暮れ>は人生の終わりとも思える老教師の姿が20年前の昔の祭りでのときちゃんとのまじわり、話が胸に迫ってくる。
最愛の妻を亡くし、生きがいを失った人間、でもおはなし会で子供たちに、昔ときちゃんに話したお話やら、新しく作ったはなしを話し、若い孫に当たるような重森さんたちとのやりとりを通し、そして昔を偲ぶために昔住んでいた家にいま住むという童話作家に奇妙なお願いの手紙を出し、その後自分は死のうと思っている与沢。切ない。
もうひとつ<光の箱>も、いじめにあって圭介と弥生の絵本作りに活路を見いだしている姿がいい。しかし高校時代になり、夏美という女性の登場で思いがけない展開に。そして謎の夏美の転校。その理由が、同窓会を契機に明かされる。
<暗がりの子供>も母親のおなかに赤ん坊が宿ったときの子供の反応、父と母の会話に大好きな祖母の扱いにもショックを感じてしまう子供。
それらを通して最後の<四つのエピローグ>では隠されていた部分の物語、その後の様子などがつむられていて未来を予感させる様子へと。
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