益田ミリ 『永遠のおでかけ』



              2022-01-25


(作品は、益田ミリ著 『永遠のおでかけ』    毎日新聞出版による。)
                  
          

 
本書 2018年(平成30年)1月刊行。書き下ろし作品。

 益田ミリ
(本書より)

 1969年、大阪府生まれ。イラストレーター。主な著書に「今日の人生」(ミシマ社)、「美しいものを見に行くツアーひとり参加」「すーちゃん」シリーズ(幻冬舎)、「沢村さん家のこんな毎日」(文藝春秋)、「こはる日記」(KADOKAWA)、「僕の姉ちゃん」(マガジンハウス)、「泣き虫チエ子さん」(集英社)などがある。絵本「はやくはやくっていわないで」(共著・ミシマ社)で第58回産経児童出版文化賞を受賞。

主な登場人物:

わたし
(著者の益田みり)

イラストレーター、47歳。
東京で仕事。実家は大阪にある。

叔父

優しかった叔父が大好きだったが、ホスピスで亡くなる。
亡くなる前に訪れるも、たくさんいる姪っ子たちの中でも、甘え下手のわたし。叔父との思い出が一番少ないのではと危惧しながら・・。

父親

叔父が亡くなって1年も経たないうちに、父の具合が悪くなった。末期ガン、余命6ヶ月の宣告。家に帰りたいと・・・。
定年まで鉄鋼会社の現場監督。 短気ですぐにカッとなる。損な人。読書が好きだったが、入院してからは疲れるようですっかりしなくなる。

母親 優しさ、思いやりのある人。
甘え上手。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

「大切な人の死」で知る悲しみと、その悲しみの先にある未来。 誰もが自分の人生を生きている。何気ない日常のふとした瞬間がこの上ない宝物に思える珠玉のエッセイ20編を書き下ろしで収録する。

読後感:

 久しぶりのエッセイを読んだ。読後感はどう記したらいいものかと、過去のものを見返した。
 さて、叔父の死に、さらに続いて父親の余命6ヶ月の末期癌宣告。全ての治療を拒否し、実家に帰りたいという父親の実家での様子。そしてわたしとの交流を、日常の何気ないやり取りやふるまいを通して、忍び寄ってくる死へのおののき? 切なさ、ちょっとした希望といったものが伝わってきた。

 書くテーマには色んなことがあるが、そこに流れているのは、やはり父の死に伴う過去の出来事から、ああしてあげたらとか、こうしていたらという後悔の念。そして今は生きている母とも別れるときのことを思わざるを得ないことが底流に流れている。
 そんな中で悲しみのシーンでの、ちょっと笑いを誘うシーンが現れるところが余計に奥行きを感じさせていい。

 たとえば、葬儀屋さんとの準備での打ち合わせで、父親はこういうことにお金をかけることを嫌ってしたし、母やわたしは質素にしようねと話していたが、葬儀屋の「提灯には、亡くなられた方の足元を照らす、という意味合いがありまして・・・」に。
「どうする? お父さんの足元、照らす?」などと。

 また、ふっとこぼれてくる言葉のその瞬間が、心に響いてきた例に、私の個展を観たいとタクシーで出かけ、15分ほど滞在して帰る途中、父親が好物の回転寿司屋に「ちょっと寄って行こうか」に「ワシ、もう家に帰りたい」と小さな声で言ったなど。


余談:

 益田ミリの作品の魅力についてネットを見ていたらこんな風なのが。
 ・何気ない日常の中で女子が感じる些細なことを切り取って描かれている作品が多く、読むとなぜかほっこりとした気持ちになる。 心が苦しいときはミリさんの作品を読んで、肩の力を抜く日々と。
 ・ミリさんが切り取った「ふと」の場面は、私の中のどこかに積み重なっていたモノに「リアリティ」をつけて「ここにいるよ」と鳴らしてくれる。たぶん、ミリさんファンの人は、この感覚をわかってくれるんじゃないかなと。 

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
戻る