真梨幸子著 『人生相談』
 



 

              2016-05-25



(作品は、真梨幸子著 『人生相談』   講談社による。)

           
 

 初出  「小説現代」2013年5月号〜2014年1月号
      単行本化にあたり、大幅に加筆修正。
 本書 2014年(平成26年)4月刊行。

 真梨幸子(まりゆきこ)(本書より)

1964年宮崎県生まれ。1987年多摩芸術学園映画科(現・多摩美術大学映像演劇学科)卒業。2005年「孤独症」で第32回メフィスト賞を受賞しデビュー。その後も続々と意欲作を発表。2011年に文庫本化された「殺人鬼フジコの衝動」が累計50万部を超える大ヒット。一躍“イヤミス”の旗手として注目を浴びる。その他の著書に「えんじ色心中」「女ともだち」「深く深く、砂に埋めて」「クロク、ヌレ!」「ふたり狂い」「みんな邪魔」「聖地巡礼」「パリ黙示録1768娼婦ジャンヌ・テスタル殺人事件」「プライベートフィクション」「4012号室」「インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実」「鸚鵡楼の惨劇」がある。(おうむろう)

主な登場人物:


<“福善舎”関係者> 大手出版会社。

岡部康

大手出版社“福善舎”文芸編集部副部長。小説講座の講師。キャバクラでは武蔵野ェ次は自分が育てたと吹聴していたが、巨大化した武蔵野ェ次の前に立場は逆転。キャバ嬢のカノンに入れ込み、妻の隠し財産を発見ローレックスの時計をカノンにプレゼント。
妻は占いにはまっている。

佐野山美穂 岡部の部下。樋口義一の担当、34歳。樋口の新作でヒットを狙っている。体型は肥満タイプ。緒方友惠が樋口作品を扱うことに怒る。
緒方友惠 文庫編集部。PR誌に樋口の新連載を担当。美穂とは同期、苦手な相手。
高橋雅也 元岡部の同僚で5年後輩。校閲担当、樋口義一の新作の原稿校正で裏付け調査中、地下鉄のホームから転落死。緒方友惠と結婚予定であった。
<作家>

野山ェ次
<ペンネーム:
  武蔵野ェ次>
妻 芳美

大洋新聞よろず相談担当の川口寿々子を恩人とする。よろず相談の回答原稿を作成。作家デビューして7年、「刻まれた友情」でミリオンセラーに、巨人と化す。売れない頃クッキー作りのバイト。
妻は元銀座のホステス。占いにはまり、夫との結婚は必ず成功するからと。

川口義一
<ペンネーム:
   樋口義一>
妻 アキナ?

固い社会派ミステリーを得意とする売れないイケメン作家。「大いなる背徳」でブレイク、新連載では20年前に実際に起きた横領事件をモチーフにしたものを。
若い頃両親は離婚、母親に捨てられ殆ど保育所育ち。母への復讐心を支えにバイトでホストも。

<大洋新聞関係者>
川口寿々子

よろず相談室担当。かって小説講座のゲスト講師をしていた。
根っからの記者魂の持ち主、ただのお節介のくらいに。
ある日突然姿を消し、20年以上経ち法律上死亡。

並木郁子 社会部の記者、川口寿々子は先輩。占い師。
<ゴミ屋敷関連人物> 20年前原田家に子ども二人と入り込んできた家族が居座り、今はゴミ屋敷に。今の所有者は川口義一名(競売の落札者)。

原田和子
姉 芙美子
(ふみちゃん)
弟 健太郎
(ケン)

元所有者(?)。ある時から原田家の人間は姿を消す。
芙美子は「ハニーフラッシュ」のナオミ。まったくの他人に家を取られ追い出され、母親はノイローゼの末自殺。後は自身で弟を医学部に進学させるために働いている。

弟 小坂井剛(つよし)
姉 野上美奈子

姉は嫁に行き、今はゴミ屋敷に一人住む。キャバ嬢のカノンに入れ込み、ナオミからエルメスのバックを一千万円で融通してくれる話に乗り、家の中のお宝探しで武蔵野ェ次の手書きの生原稿と異様な物を見つけた。

榎本千代子
夫 良成

ゴミ屋敷の隣人。クッキー作りの工場でパート、野山ェ次、安田さんと同じ仲間。
山木千佳 ゴミ屋敷の近所。西新宿のタワーマンションにコンシェルジュとして派遣されている。結婚相手決まっている。相手は葛西健人。

ガーネット・サクヤ
(本名 並木郁子)

占い師。西新宿のタワーマンションに住む。
メグミ エスティシャン。大手エステサロンを出て独立したオーナーに誘われ、店長待遇で路地裏の店を任されている。

<ハニーフラッシュ
関係者>

キャバクラ。
・カノン ナンバー2。
・ナオミ 古参のホステス。
・アキナ ナンバー1。養子すぐれるもプライドばかり高く、我強く欲も深い。しょぼくれ男の根本浩之が会社の金を横領、アキナに貢ぐ。
<大手電機メーカー>
豊田純一 営業二課課長。大崎課長と同期。女子社員に人気。社内に部長昇進の噂。大洋新聞の“よろず相談室”に「セクハラに時効ありますか」の投稿記事は、大崎課長のこととおもわれるが・・・。
大崎 営業一課課長。同性の目から見ても下心丸出しの雰囲気。
葛西健人 大崎の部下。3ヶ月後山木千佳との結婚が決まっている。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

大洋新聞に連載されている「よろず相談室」には老若男女から様々な相談が寄せられている。一見、なんの連関性もない人生相談の数々。ところがこの相談の裏には衝撃の事件が隠されていた…。

読後感
  

 内容は人生相談にまつわるトラブル(?)が展開。登場人物、会話の相手との関係を探りつつ、しっかりと読んでいかないと入り込んできて分からなくなることも。しかしトラブルはごく自然にあることでその相談の回答はなんともあきらめたり、我慢したりの厳しいもの。
 しかしながら果たしてこの展開、そのままずっとこのままかと思いきや・・・。なにやらどんでん返しが隠れているような予感。

 読んでいて頭の中は悲鳴を上げそうに。これはミステリー小説なのか。途中で失踪(川口寿々子)したり、行き先不明者(安田さん?)が出たり、突然死んだり(高橋雅也)と。
 大いなる集結は最初の投稿「居候している女性が出て行ってくれない」と最後の「助けてください」で大きなところは明確になったと考えて良いのだろう。
 しかし、しかしまだ何となくすっきりしない。ハッキリと人物の相関図を完成させないと謎は解けない。
(一応整理して主な登場人物にあげておいた。)

 こんな作品はお手上げだ。でも読まずにはいられないのはどうしたものか。
 一番のミステリーはゴミ屋敷を巡る原田和子と入り込んできた母親と二人の子どもの存在。どちらが居候をしているのかごっちゃになる(事実と異なる風に描写されているので)。
 その理由が民法395条を悪用し、競売で落札したのに立ち退いてくれない。落札物件を占有し続け、立ち退き料を要求する事にまつわることが背景に。(それに川口寿々子がアドバイスをしていたようだ)

 さらに複雑にしているのが、1千万円の入ったゴミ袋取得事件とその処理の仕方。投稿に嘘の内容があったり、投稿者が誰かを装っての物だったりと。描写の仕方にも読者を惑わせる趣向(?)が施されていてもうお手上げか。
 ということでこんなところでお開きに。でも何となく面白かった。

 

  

余談:

 いったいどういう作家なのか、もう少し調べてみたい。原稿を書くのに頭の中を整理しないと書けないので覚え書きやら、時に本を読み返したりして次第に判ってきたが、それでもまだ霧の中にいるようで。もうこの辺にしておこう。  

背景画は、清流をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

                    

                          

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