印象に残る場面:
◇夫婦生活30年、園子のつぶやき、晃作の意図:
「私は何をして来たんだろうって考えていると、ふっと本当の私がどこにもいないような気がしてしまうだけ」「きっと、私ひとりが考えればいいことで、あなたには関係のないことなんだわ」
晃作が誕生日にプレゼントをしようと思いついたのは、妻を喜ばせるためというより、むしろ彼女の抱える正体の掴みにくい何かに、上からふわりと覆いかぶせて見えなくしたいと願ったからだった。園子が重い扉を開けないとも限らない、との甘い期待もあった。
◇園子、娘のみどりにスカーフをプレゼントするために柄を選ぶに際し:
「親は親なりに自分の考えを子供に押しつけていけばいい。無駄は出るかもしれないが、子供の側でその中から自分にあったものを選び取っていくだろう。」
◇美夕が実道にいった言葉:
「結婚だって、約束をコインロッカーにしまって、二人がそれぞれの鍵を持っているみたいなものかもしれないわ」
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