物語の概要:(図書館の紹介記事より。)
厳しくもあたたかな幸田文の視線は、自身の、そして他人への老いにも向けられていた。いかに芯の通った老いかたをするか。
人生の達人・幸田文の生きかたから学ぶアンソロジー随筆集。
読後感:
あとがき(書き手は幸田文の娘、青木玉の娘青木奈緒)により、本作品が幸田文の随筆集から母である青木玉も加わり、作品の選定なども受け、編集者と共にまとめられたもののようだ。
内容は人は年を老いるものであるが、老いを感じるようになる瞬間とか、感じるようになった出来事、どんな風に老いたいか、その為にどんなことを心がけているかなど、おのおのの事柄とそれを感じ取った年齢も記されていて、自身頷けることとか、自分もそんな風になろうとかを考えさせられることも多い。
特に印象に残ったことの一例を挙げてみた。
・ 私 (幸田文)が父(露伴)に「本を読んでものがわかるというのはどういうこと?」と訊いて
父の言葉は「氷の張るようなものだ」。
一ツの知識がつつと水の上へ直線の手を伸ばす、その直線の手からは又も一ツの知識の直線が派生する、派生はさらに派生をふやす、そして直線の先端と先端とはあるとき急にひきあい伸びあって結合する。すると直線の環に囲まれた内側の水面には薄氷が行きわたる。それが
「わかる」 と云うことだという。(1955年 50歳)
・ 苦難は人を玉にする。身に病むところあれば心は聡し。(1969年 64歳)
・ 何か一つでも好きなこと好きなものを持っているのは、身を平安にする強さがある。
(1965年 60歳)
・ 人嫌いの永井荷風先生のこと
先生の人嫌いは、暖かさを底辺にした冷たさだと思う。(1959年 54歳)
・ 老後の仕合わせとは、小さな仕合わせを次々と新しく積み重ねていくことではないかと私は思う。(1969年
65歳)
・ 付き合いの濃い淡いは、度数によるとは限らぬ。(1964年 60歳)
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