読後感:
この作品も裁判もの。ただし語り手(私)が新聞記者の司法記者というのが特異なところ。 しかも私は小さい頃被告人の奈緒子のすぐ近くに住んでいて中学生の頃の憧れの存在であったし、弟の寛吉とはおぼれかけた時に助けられたという仲でもあったため、殺人を起こしたなんて信じられないし、裁判の行方が気になるところであった。
ということで、裁判の行方を私という立場から客観的に見ているところがみそである。
そして裁判の進め方がどのようなものであるかを知るのもドラマなどを見るのに参考になる。とはいえ内容は被告人が自白し、犯行を認めているにもかかわらず、弁護人は無罪を主張するという異例の状態で裁判が進行していく。
ある事件から弁護士活動を辞めていた原島弁護士が当初弁護を担当していた水木弁護士が途中で辞退し、原島弁護士にバトンタッチしたというところからも何か訳がありそうだし、どのようにして無実をはらしていくのか興味の湧くところであった。
さて裁判が進行する中、私の家庭事情にも妻が流産を経験して後やっと妊娠の知らせが入ったが、妊娠初期に風疹にかかっていたため、障害を持った子が生まれる可能性があることから産むか産まないかの決断を迫られるという波乱が伴っている。しかも被告人の弓丘奈緒子の弟に精神薄弱の寛吉をめぐり、奈緒子の結婚、両親が亡くなった後将来の面倒を誰が見るのかが問題となる。事件にはそんなこともからんできて推理劇の中にも非常に大きな問題を提議されていて、考えさせられるところが多い。
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