物語の概要:
『天網』
同時多発バスジャック事件が発生。警視庁の隠密捜査専門のバイク部隊「トカゲ」に出動命令が下る。犯行に並行するかのように、ネット上で犯人しか知りえない情報が流通し…。「TOKAGE」シリーズ第2弾。
『TOKAGE』
警視庁捜査一課特殊犯捜査係の覆面捜査部隊「トカゲ」が、大手銀行の行員3名がさらわれた企業誘拐事件の犯人逮捕に挑む。警視庁捜査一課の若手、上野数馬は「トカゲ」の一員として初めての誘拐事件に挑むが…。 (「TOKAGE」シリーズ第1弾。)
主な登場人物:(「天網」中心に)
上野数馬(32歳) |
警視庁刑事部捜査第一課特殊班捜査係(SIT 通称「特一」)、巡査長。「特一」の中で最も経験浅い。トカゲのメンバー。
「トカゲ」では傍観者として事件を解決する人間模様を見ている。
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白石涼子(30歳) |
「特一」 知性と意志の強さ持ち合わす。トカゲのメンバー。
高部係長の副官として名コンビぶりが光る。
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警視庁刑事部捜査第一課特殊班捜査係の面々 |
・村井良祐(りょうすけ)管理官
・高部一徳(かずのり)係長 冷静沈着。
・加賀見陽一(42歳)警部補 交渉の専門家。
・東海林孝(しょうじたかし)(50歳)巡査部長。
・麻田和美(32歳)巡査部長。加賀見の弟子とも。
加賀見ら3人は頭脳部隊。
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湯浅武彦(35歳) |
東日新報東京本社社会部遊軍記者、独身。
以前5年ほど大阪本社に勤務。
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東日新報東京本社社会部 |
・橋本営蔵 デスク 今風の管理職タイプ。
・木島孝俊 大阪から転勤してきたばかりの若者。能天気。フルブラウザのノキアのスマートフォンを使いこなす。
湯浅は木島のことを記者としての資質に欠けていると見ている。
「トカゲ」では大阪本社勤務で東京から出張してきた湯浅にくっついて取材活動。センスを磨けと言われる。
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<補足>
トカゲ:警視庁刑事部のオートバイ部隊。普段は捜査員としてそれぞれの課の仕事をしている。
読後感:
『天網』
同時多発バスジャック事件を巡り、警視庁側の上野数馬、麻田和美の眼を通しての対応、そして新聞記者湯浅武彦側の眼を通しての物語の展開が描かれている。
事件そのものの興味もさることながら、語り手側の三人の行動や気持ちや感情の揺れが興味を引きつける。さすがこの著者の人気のもとだろうと。
警察側でいくと、経験の浅い上野がリーダーに指名され、年も上で刑事としての経験もある二人に馬鹿にされていると感じながら任務を遂行するシーンとか、ベテランの湯浅記者が新人の指導を兼ねて組まされた木島のセンスのなさを嘆きながらも、特殊な才能を見出していく過程もおもしろい。
そしていずこも、キイとなるポジションにいる高部係長、橋本デスクの指示や眼力は心地よいところである。
刑事物といってもちょっと視点を変えることで興味をそそる素材があるものである。
『TOKAGE』
「TOKAGE」シリーズの第一弾に当たるもので、第2弾の「天網」を先に読んだため、登場人物の大半が馴染みとなっていてすんなりと物語の核心に入れた。
同著者の著書が多数あることからしても理解出来るが、さすが話の展開の切れ味といい、落としどころ、勧善懲悪どころ、緩急の箇所など機微を知り尽くしていて読んでいてとても気持ちよく読めるのが作品の強みだと思う。
警察内部の指揮命令系統における上に立つ者の判断、信頼関係で組織の能力が生きもし、死にもするさま、また報道記者側からみた事件の迫り方、とらえ方そして、警察側と記者との人間関係の築き方、これらも盛り込みながら軽快な筋運びに喝采。
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