今野敏 『 棲月 』



              2020-12-25


(作品は、今野敏著 『 棲月 』(せいげつ)      新潮社による。)
                  
          

 初出 「小説新潮」2016年9月号〜2017年8月号。
 本書 2018年(平成30年)1月刊行。

 今野敏:
(本書より)  

 1955年北海道生まれ。上智大学在学中の1978年に「怪物が街にやってくる」で問題小説新人賞を受賞。レコード会社勤務を経て、執筆に専念する。2006年、「隠蔽捜査」で吉川英治文学新人賞を、2008年、「果断 隠蔽捜査2」で山本周五郎賞と日本推理作家協会賞を、2017年、「隠蔽捜査」シリーズで吉川英治文学賞を受賞する。さまざまなタイプのエンターテインメントを手がけているが、警察小説の書き手としての評価も高い。近著に「継続捜査ゼミ」「サーベル警視庁」「回帰 警視庁強行班係・樋口顕」「アンカー」「変幻」など。 

主な登場人物:

竜崎伸也(しんや)
妻 冴子
(さえこ)
娘 美紀
息子 邦彦

大森署の署長。降格人事で所轄に。原理原則をモットーのキャリア。
・冴子 結構ずけずけと夫にもの申す。
・美紀 会社勤め、婚約者 三村忠典(商社マン)と交際中。
・邦彦 二浪で東大の大学生、ポーランドに留学を計画中。

伊丹俊太郎 竜崎と同期の警視庁本部の刑事部長。
大森署関係者

・副署長 貝沼悦郎
・警務課長 斉藤治
(おさむ)
・生活安全課長 笹岡初彦
・組対課長 関本良治
・戸高善信
(よしのぶ) 刑事課強行班係。
・根岸紅美
(くみ) 生安課少年係。
・田鶴喜久雄巡査部長。生安課サイバー犯罪対策班。

捜査本部関係者

玉井啓太(18歳)殺人事件の捜査本部。at大森署。
・本部長 伊丹
・副本部長 竜崎
・捜一課長 田端
・管理官 岩井豊

本部関係者

・前園 生安部長 鹿児島出身のノンキャリア。権威主義の石頭。
・風間雄治 サイバー犯罪対策課課長、警部。

第二方面本部関係

・弓削(ゆげ)方面本部長。
・野間崎管理官

玉井啓太 玉井一派のリーダー、18歳。半グレ(?)やりたい放題、準暴力団扱いの人間。集団リンチに会い溺れ死ぬ。
前原弘喜 玉井からの恐喝被害者、33歳。宅配便の配達業務。
芦辺雅人(まさと) 玉井からのいじめで引きこもりがちに。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)
 
 私鉄と銀行のシステムが次々にダウン。不審に思った竜崎はいち早く署員を向かわせるが、警視庁生安部長から横槍が入る。さらに、管内で殺人事件が発生。だが、伊丹から異動の噂があると聞かされた竜崎はこれまでになく動揺していた…。

読後感:

  隠蔽捜査シリーズの7、いままで1〜3まで読んでいて、久しぶりの作品となる。やはり降格人事での大森署署長の竜崎の活動で、同期の伊丹との忌憚なき付き合い方は健在。
 今回の竜崎は捜査本部の真っ最中に人事異動の話が出て、これまでの所轄での慣れに親しみかけている自分を顧みることにもなったり、本部でのキャリアの仕事では得られなかった所轄の生活で得るところもあった。

 さて、今回の事件は私鉄のシステムダウンとさらに、時をおかずに銀行でのシステムダウンが続いたことで、所轄外の場所にサイバー犯罪に詳しい人間を状況調査のために大森署から送り出す。そのことで第二方面本部長や、本部の生安部からクレームが来るも、はねつける。
 そんな時、殺人事件が発生する。札付きの少年(18歳)の玉井が溺死させられた。
 少年係の根岸が非行グループの少年達を聴取したところ、若者達の間で“ルナリアンが支配する”という様なことが話題になっていると。
 “ルナリアン”とは月世界の人という意味らしいが、果たして何のことやら・・・。

 サイバー攻撃のハッカーと、半グレの玉井リーダーの殺害に関連性があるのか、玉井の恐喝でいじめられ引きこもり気味の芦辺雅人や玉井グループの3少年への事情聴取で果たしてどのような展開になっていくのか、なかなか興味深い。
 一方で竜崎の家庭の揉め事も竜崎を悩ませる。妻の冴子の何があっても動じない様子が頼もしい。


余談:

 物語の展開は、簡潔な言葉でたたきつけるような表現がテンポ良くたたきつけられ、スピード感、突き放したような言葉遣いが心地よい。この後もシリーズ作品があるし、隠蔽捜査7では神奈川県警刑事部長への移動話が出ているのでこの後も手にしたい作品である。

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
戻る