今野 敏著 『 精鋭 』








              2019-02-25

(作品は、今野 敏著 『 精鋭 』      朝日新聞出版による。)
          

  初出 「朝日新聞」2014年1月4日〜9月30日に連載。単行本化に際し加筆修正。
  本書 2015年(平成27年)2月刊行。

 今野 敏

 
 
1955年、北海道生まれ。上智大学在学中の78年に「怪物が街にやってくる」で第4回「問題小説」新人賞を受賞。レコード会社勤務を経て、作家業に専念する。2006年に「隠蔽捜査」で第27回吉川英治文学新人賞、08年に「果断―隠蔽捜査2」で第21回山本周五郎賞、第61回日本推理作家協会賞を受賞。「チャーミングワー」「自覚―隠蔽捜査5.5」など著書多数。     

主な登場人物:

柿田亮(りょう) 6ヶ月間の初任教養研修を終え、都内城南地区の某警察署地域課に配属になった巡査、22歳。大学時代はラグビー部で活動。何事にも前向き思考、呑気な性格。
曽根巡査部長 柿田にとって研修時代の指導教官、正式配属の地域課同班の刑事。
<機動隊の実験入隊訓練時>
池端学 柿田と同じく第四機動隊の実験入隊訓練に参加の同期。池端はSAT(警備部の特殊急襲部隊)を目指し、寮では柿田の隣室で1年年上。
山城 第四機動隊で近代五種部の部員。柿田に射撃のコツを教える。
<SATの試験入隊訓練時の訓練生>
藤堂淳也(じゅんや) リーダーの素質がありそうな年上の巡査。
桐島慎一 いつも茫洋として緊張感、やる気感じられない巡査。体力テストは最下位、でも射撃の能力は抜群の巡査。
村川繁田(しげた) 「同期の訓練生がみんなのライバル」と、皆とは加わらない姿勢の巡査。
市ノ瀬 習志野空挺部隊の陸士長。柿田と同じ年か年下。クラブで柿田と自衛隊と警察の違いを語る。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 柿田亮は研修を終えたばかりの新米巡査。自分が警察官に向いているのか悩みつつも、機動隊を志望し、凶悪事件を解決する特殊急襲部隊の隊員を目指すが…。優れた警察小説であり、成長物語でもある著者の新境地。          

読後感:

 柿田亮という若者が警察官になり、大学時代はラグビー部で体力勝負の世界にいて、余り悩むことがなく過ごしてきた。しかし色んな部署での研修期間で、警察官として法律とその運用に関して判断基準に悩む姿は、最近経験した一時停止違反で切符を切られた自分が、その時反論したことと同じ様なことを、果たしてその時の警察官は考えていたのだろうかと非常に身近な問題として感じられた。
 丁度小説で交通課に研修に行っていた巡査が、切符を切るのが快感と言っていたのが印象的であった。

 それはさておき、主人公の柿田は判断基準で悩むより、ただただ体を動かすことの方が適しているとその無茶振りや言動が上に”おもしろいやつ”と思われ、配属先の地域課から機動隊へと移り、さらにSATへの試験入隊訓練(6ヶ月)に参加することに。
 その過程で同期生との交流、先輩隊員との交流を通じ、警察官として、体力的にも、考え方についても成長していく物語である。
 

余談:

 日頃テレビのドラマで、SATが登場する場面に出くわすが、本小説に記述されている内容を理解して見るとだいぶ味方が変わってくる。
 本小説では警察官になる迄の過程が描写されていて、こんな内容も小説になるんだなあと著者の新しい面を見る思いである。
     

背景画は、花をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

           
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