今野 敏著 『キンモクセイ』








              2019-04-25

(作品は、今野 敏著 『キンモクセイ』     朝日新聞出版による。)

          

  初出 「週刊朝日」に2018年2月23日号〜11月2日号に連載。単行本化に際して加筆修正。
  本書 2018年(平成30年)12月刊行。

 今野 敏
(本書より)
 
 1955年、北海道生まれ。上智大学在学中の78年に「怪物が街にやってくる」で第4回「問題小説」新人賞を受賞。レコード会社勤務を経て、作家業に専念する。2006年「隠蔽捜査」で第27回吉川英治文学新人賞、08年に「果断――隠蔽捜査2」で第21回山本周五郎賞、第61回日本推理作家協会賞を受賞。「カットバック 警視庁FCU」「任侠浴場」など著書多数。
      

主な登場人物:

<土曜会>のメンバー 同期の若手キャリア官僚の集まり。全員私立大学出身。
隼瀬(はやせ)順平 警察庁警備局警備企画課課長補佐、警視、30歳。(公安の元締)
木?田(つくた)真一 外務省北米局北米第二課(日米間の経済について担当) 大柄。
燕谷(つばたに)幸助 厚生労働省健康局指導調査室。小柄、皮肉屋。
鷲尾健(わしお たける) 防衛省人事教育局。
鵠沼(くげぬま)歩美 経済産業省。隼瀬が好意を持っている相手。
警察庁警備局企画課メンバー ・水木勇吾 課長補佐、警視正。隼瀬の10歳上。
・渡部芳郎課長、警視正。水木の一期上、41歳。
・二人の理事官
 早川宗則
(むねのり)水木の同期、警視正。表の理事官。
 服部忠司 警視正、43歳。裏の理事官。’ゼロ’と呼ばれる。 
岸本行雄(ゆきお) 警察庁刑事局刑事企画課刑事指導室、警視。隼瀬の二期後輩。
神谷道雄 法務省刑事局企画調査室次長。35歳。
松下慶一 警視庁捜査一課殺人犯捜査第四係のベテラン刑事。
庄司要(かなめ) 法務省刑事局公安課、神谷と同期。
砂山和彦 法務省刑事局公安課、課長補佐。水木勇吾の知り合い。
武藤武 警視庁記者クラブ担当の新聞記者。隼瀬より5歳年上。
東叶夫(あずま かなお) 野党の衆議院議員。出身母体は市民運動団体。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 キャリア官僚の連続不審死、日米合同委員会と公安組織“ゼロ”の暗躍、そしてコードネーム“キンモクセイ”をつなぐ糸とは?日米関係の闇に挑む、警察インテリジェンス小説。            

読後感:

 法務省のキャリア官僚神谷道雄が殺害されたという事件で警察庁、警視庁が大事件として動きだし、水木と隼瀬が専任チームとして動き出したが、すぐに解散、警視庁の捜査本部も縮小された。
 ”キンモクセイ”という言葉が醸し出す謎の言葉を知った人間が次々と死を遂げることでますます不可解を感じた人間に不安が襲いかかる。

 疑問を感じて調べようとする隼瀬と水木。誰が敵か味方か調べながら隼瀬は水木の洞察力の凄さに感服しながら、教えを受けながらも真相に近づいていく。
 水木の言葉「(”キンモクセイ”という謎の言葉に)一度触れたら、知らんぷりしても誰かが迫ってくる。だから、徹底的に解明してそれを公表することでしか自分の身は守れない。いいか、俺たちは公安だ。そういう世界で生きてるんだ。」に触発される。
「秘密は公表することで秘密でなくなる」という言葉を頼りに・・。

「土曜会」のメンバーは警察庁から法務省、防衛省、経産省、外務省と色んな部署の若手キャリア官僚の集まりから、情報のやり取りや考え方のやり取りがあり、もし敵でなかったら有用な面が多くその活躍もある。

 物語の中は日本が米国(中でも米軍)に操られている内容が問題提起されていて、国民全員の、盗聴・傍受など監視による情報収集の危険性を示唆している。
 既に現実問題として特定秘密保護法と改正組織犯罪処罰法の成立施行により普段何でもない人にとっては全然影響ないが、いざ目を付けられると思い通りに締め付けることが出来兼ねない世の中になってしまうかもの恐れを感じてしまう。
 成立まではマスコミには賑わしていたが、今は話題にもされなくなって・・・。
 とはいえ小説では”キンモクセイ”トイウコードネームの内容、殺人者の犯人、逃亡を続けた隼瀬の状況、誰が敵で、味方は誰だったのかが明らかにされていく。
  

余談:

 今回は若手官僚が警察庁、外務省、防衛省、経済産業省、厚生労働省と色んな省庁の人間が関わっているのと、特に公安に関係する組織や仕事内容が出てきてなかなか厄介だった。
 ・法務省と警察庁:警察を統括するのが警察庁、検察や裁判所を統括するのが法務省。
 ・法務省の刑事局公安課:民事局に対しての刑事局で法的な意味あいが強い。検事や判事のことを担当。
 ・警察庁の刑事局と警備局:警察組織としての刑事局。警備局は公安の元締め。
 ・警視庁公安部:外事一課 ロシアや東ヨーロッパの犯罪行為や工作活動を捜査対象。             外事三課 国際テロ担当。
       

背景画は、花をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

           
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