今野敏著  『 同期 』




              
2014-01-25




(作品は、今野敏著 『 同期 』   講談社による。)

                 

 初出 「小説現代」2008年3月号〜2009年3月号
 本書 2009年(平成21年)7月刊行。

 今野敏:(本書より)

 1955年北海道三笠市生まれ。上智大学在学中の1978年「怪物が街にやってくる」で問題小説新人賞受賞。卒業後、レコード会社勤務を経て作家となる。2006年「隠蔽捜査」(新潮社)で吉川英治文学新人賞受賞。2008年「果断 隠蔽捜査2」(新潮社)で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞受賞。「空手道今野塾」を主宰し、空手、棒術を指導。他の著書に「ST 警視庁科学特捜班」シリーズ、「東京湾臨海署安積斑」シリーズなどが、また近著に「疑心 隠蔽捜査3」(新潮社)、「武士猿」(集英社)などがある。
 

主な登場人物:
宇田川亮太(りょうた)

警視庁刑事部捜査一課5係1年の巡査部長、32歳。
上昇志向強く野心強い。蘇我と同期。

蘇我和彦

公安部総務課。公安部の幹部の目に留まり、2年前本庁に引っ張られるた巡査部長。茫洋とした印象、上昇志向なし。
月島署管内のドザエモン事件での暴力団へのウチコミの3日後、突然懲戒免職となり、行き方不明に。

植松義彦(51歳)

捜査一課5係、警部補、古風で頑固。宇田川の相方。
特捜本部では鑑取りに割り当てられる。

土岐達郎 下谷署強行犯係の部長刑事。特捜本部で班分けで宇田川と地取りに割り当てられる。
捜査一課

・田端課長
・名波係長 5係係長。人情に厚い。

組織犯罪対策課

・滝田課長 組対4課の課長。(かっての刑事部捜査四課、つまりマル暴)ノンキャリア。特捜本部の主任で仕切る。
・原田勇治管理官 40代後半の警視。特捜本部の副主任。
・柚木 暴力団の抗争事件とする見立てに密かに異なる見方をしていて、宇田川に告げる。

幹部たち

・吉田誠次公安部長
・韮沢組織犯罪対策部長(48歳)元公安出身の情報マン。
・門前警察庁警備企画課長

八十島秋水 右翼の大物。60代、数少ない右翼の理論派。
2件の殺人被害者

・高田衛(まもる) 関東連合石波田組の幹部。晴海でドザエモン。月島署管内。
・石田伸夫 関西の広域暴力団桂谷組の組員。下谷所管内で刺殺。
二つの暴力団の抗争事件として組織対策課主導、刑事部応援の形で特捜本部が設置される。


物語の概要:

ウチコミの最中に逃走した暴力団員から発砲された警視庁捜査一課の宇田川を間一髪で救ったのは、同期の公安刑事だった。直後、その男は懲戒免職になり姿を消す…。現時点での集大成ともいえる最新警察小説、登場。

読後感:

 主人公の宇田川刑事が、相方となる植松警部補(51歳)と所轄所の土岐部長刑事(50代ベテラン)による色々な面でのシゴキ、アドバイスを受けながら同期の蘇我の懲戒免職、行方不明事件がらみに立ち向かう中、次第に刑事というもののあり方をスタディーしながら、成長していく様が描写されている。

 それも異なる組織の人間との絡み、大物人物との接触、警察庁の雲の上の人間とのやりとりにおいて自分の信念に揺り動かされるままにぶつかっていく姿、それらにぶつかっていく過程で次第に視野が広がり、たくましくなっていく様子が感じられる今までの刑事物の中でちょっと異なる印象を受ける作品であった。

 特に上司や偉いと思っていた人間が、自分が他の経験から得たもっと異なる情報を得たときに違った印象を持つに至る辺り会社生活の実感を思い起こさせるものがある。

  

余談:
 ちょうど1月からテレビの新番組で今野敏原作の「隠蔽捜査」がスタート。このシリーズは以前に読んでいるが、ドラマでもなかなかの適材の配役陣で今後の醍醐味が期待される。
  背景画は、おなじみ桜田門の警視庁建物。