小松亜由美 『誰そ彼の殺人』



              2020-01-25


(作品は、小松亜由美著 『誰そ彼の殺人』    幻冬舎による。)
                  
          

 初出 「恙なき遺体」       小説幻冬  2016年11月号〜12月号
    「誰そ彼の殺人」      小説幻冬  2017年4月号
    「蓮池浄土」        小説幻冬  2018年6月号
    「安楽椅子探偵、今宮貴継」 小説幻冬  2018年12月号

 本書 2019年(令和元年)5月刊行。

 小松亜由美:
(本書による)  

 秋田県大仙市生まれ。東北大学医療技術短期大学部衛生技術学科を卒業し、臨床検査技師免許取得。現在、某大学医学部法医学教室にて解剖技官を務め、これまで多くの異状死体の解剖に携わる。横溝正史「獄門島」を皮切りに本格ミステリに傾倒、推理作家を目指し、2016年「小説玄藤」作品集が単行本デビュー作。

主な登場人物:

梨木楓 杜乃宮大学医学部法医学教室の法医解剖技官(解剖補助がメインの仕事)、27歳。
今宮貴継(たかつぐ) 杜乃宮大学医学部法医学教室の若き准教授、32歳独身。梨木楓の上司。童顔で苦労。
小倉由樹(よしき) 宮城県警本部検視官、警部。今宮の高校時代同級生。共に生粋の仙台人。30代で警部、さらに検視官と生え抜きのエリート。
吉田巖 検視官補佐、警部補。小倉と一回り以上年上。温泉巡りが唯一の楽しみ。小倉のお目付役。

<恙なき遺体>
(つつがなき)

作並温泉の旅館の離れ、年一回の“青葉会”の集まりで、幹事役の編集者の異状死体が発見された。
芦田太一  被害者、42歳。都内三日月出版の編集者。病院嫌い。
青葉会のメンバー

仙台在住の推理作家で結成されたサロン。
・梅本遼司と清香夫妻
・渡利宗正
・涼風曉美(あけみ)

飯島澄子(すみこ) 第一発見者。紅葉旅館の仲居。毒草を見分けられるのは私だけと。
船岡雄治 仙台北署の刑事、警部補。吉田より3歳ほど年上。

<誰そ彼の殺人>
(たそがれ)

手首と両足首の先切断され、部位は行方不明の状態で沼に沈んでいた。
瀬口桂介 被害者、32歳。職業ミュージシャン。

瀬口亮介(りょうすけ)
妻 七那子
(ななこ)

桂介の兄で桂介と一卵双生児。学部は異なるも兄弟とも同じ大学卒。
「瀬口コーポレーション」の社長で豪邸住まい。
・妻七那子 3ヶ月の交際期間を経て今年の3月結婚。

<蓮池浄土> 宮城県と岩手県の県境蓮池村の蓮池に浮かんでいた。

澤木正三
妻 米子(没)

被害者、75歳。大酒家で肝臓を患っていた。
妻の米子も肝臓を患っていた。

澤木家の子供達
 いずれも家庭を持っている。

・長男 元正 家を継ぐ、49歳。
 妻 豊江 48歳。
・次男 正隆
(まさたか) 東京住まい。
・長女 正美 仙台暮らし。

河野善治 第一発見者。澤木正三の隣に住み、正三の幼馴染み。
滝本医師 村で唯一の診療所。
大江信夫 若柳署の刑事、巡査部長。
<安楽椅子探偵、今宮貴継ぐ> 車のひき逃げ事件。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 仙台の国立大学杜乃宮大学医学部法医学教室。解剖技官梨木楓は上司である若き准教授・今宮貴継とともに日夜、死体を解剖している。遺体の外傷を観察、内臓の全摘出後、病理検査にかけ、細胞まで検分。犯人でさえ気づいていない証拠にたどり着く…。

読後感:

 4つの異状死体(自然死(老衰)や病死でなく犯罪死の疑いのある死体のこと)につき杜乃宮大学医学部法医学部教室の法医解剖技官である梨木楓が、法医学教室の上司である今宮貴継の酷い態度と皮肉な言葉に曝されながらも、協力して死因を明らかにする話である。

 今宮と梨木のやり取りもまた一興で難しい医療言葉の合間に和みを与えている。
 もうひとり検視官の小倉由樹と今宮が、高校時代3年間同じクラスであっただけにこのコンビとの組み合わせも楽しい。

 さて、<恙なき遺体>では司法解剖前では死因不詳の状態、解剖で死因を判別するしか。被害者は最近体調が悪く、黄疸が出ていた、背中が痛いとしきりに訴えていた。時に脂汗、吐き気が止まらず。台所は火の車等の状況。解剖の結果末期の膵臓癌。そして致命傷は・・・。
 殺害動機は・・・。

 <誰そ彼の殺人>では身元を判別出来る指紋、歯牙がとれない為に身元の確認に難航。一卵双生児ではそれがなければ特定できない。その為に行われたのは・・・。血液検査と兄弟の既往歴調査。そして確定するためには行方不明の部位の発見。

 <蓮池浄土>では被害者はどこで殺されたか。その場所と痕跡の追求。死因は何?
 蓮池に遺棄されたのはなぜ?

 <安楽椅子探偵、今宮貴継>ではひき逃げの車のタイプ特定から犯人を割り出す。それは安楽椅子に今宮がいて、警察の情報から犯人を特定する能力。梨木楓はその能力に感服。
 かくて色んなケースでの法医学教室の解剖医の力を見せつけられた。


余談:

 本書では解剖に関する用語解説がなされている。よくドラマなどに出てくるだけに理解するのに参考となる。
 ・検視:検視官による遺体の検分。
 ・検屍(検死)もしくは検案:医師による遺体の検分。と使い分ける。
 ・検視官 異状死体を解剖するか否か判断。階級は警部か警視以上。
 ・<創> 開放性の損傷。例えばパックリと割れたキズ。
 ・<傷> 非開放性の損傷に用いられる。
 刺されてできたキズは刺創で、切ったキズは切創。
 擦過傷(さっかしょう)は擦れてできたキズ。
  等医学用語が多数あり。

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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