小泉喜美子著 『弁護側の証人』



              2019-08-25

(作品は、小泉喜美子著 『弁護側の証人』    出版芸術社による。)
                  
          

 初出 昭和38年(1963年)2月 文藝春秋新社より書下し刊行。
  本書 1993年(平成5年)11月刊行。

 小泉喜美子
(本書より) 
 
 
本名・杉山喜美子。昭和9年2月2日築地に生まれる。都立三田高校卒業後、ジャパン・タイムズ社に勤めた。34年「エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン」第1回コンテストに「我が盲目の君」(杉山喜美子名義)を投じ、准佳作となる。同年、同誌の編集長だった小泉太郎(生島治郎)と結婚。37年、オール読物推理小説新人賞に「弁護側の証人」を投じ、選考委員だった高木彬光のすすめにしたがって同作を長編化、翌年刊行した。その後沈黙するが、47年、生島治郎と離婚後に執筆活動を再開。「ダイナマイト円舞曲」「暗いクラブで逢おう」「月下の蘭」「血の季節」「殺人は女の仕事」等を発表した。また、翻訳家としても有名で、P・D・ジェイムズ、アーウィン・ショウ等、ミステリを中心に数多くの作品を手がけている。61年11月7日没。 

主な登場人物:

八島家の人々

八島漣子(なみこ)
<わたし>

元<クラブ・レノ>の専属ヌードダンサーで“ミミィ・ローイ”22歳。八島杉彦と知り合って1ヶ月もならないで電撃結婚。

八島杉彦
父親 八島龍之助

八島産業の御曹司。漣子の夫。会社からお情けの肩書きとサラリー、使う方は何倍も。
・父親の龍之助は八島産業の社長。リュウマチを患い、ここ数日は休み、離れに住む。

八島家に住む人々

3名の女中
・志瀬 両方を見る役目の老婆。
・記代 大旦那の世話がメイン。
・のぶ 一番若い女中。若旦那の世話係だった。
運転手 江崎

飛騨洛子(らくこ)
夫 規秋
(のりあき)

八島龍之助の娘(杉彦の姉)にあたる。30女。
・夫は八島産業の専務。

飛騨美沙子 飛騨専務の親戚の娘。杉彦の結婚相手だった。
由木卓平 八島家のお抱え顧問弁護士。
竹河誼(よしみ) 八島家に出入りの主治医。独身の中年男。
清家洋太郎(せいけ) 弁護士。わたしの弁護を引き受ける。
緒方 K県警の警部補。八島龍之助殺人事件の担当責任者。
エダ月園(つきぞの) <クラブ・レノ>の専属ヌードダンサーでわたしの親友。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 八島財閥の放蕩息子・杉彦に見初められ、玉の輿に乗った売れっ子ストリッパーミミイ・ローイこと漣子は、悪意と欲望が澱む上流階級の伏魔殿で孤軍奮闘していた。そんな折、八島家当主・龍之助が殺される。だが、まさか犯人が愛する夫の杉彦だったとは。死刑の判決を覆すべく、必死の調査を続ける漣子と仲間たち。新たな弁護側の証人は、果たして見つかるのか?驚異のトリックでミステリ史上に残る不朽の名作、ついに登場。ほかに単行本未収録短篇「深い水」を併せて収める。              

読後感:

 ヌードダンサーで、知り合って1ヶ月にもならずに電撃結婚した夫が、父親殺しで逮捕され、死刑判決を受ける。必死で助けようとする若妻の八島漣子(なみこ)=わたしが犯した行為が後悔の元に。
 そのわたしが物語を主導していくスタイルは、今まで刑事物とかミステリー作品の流れとなんとなく違和感を感じながら読むことに。

 登場人物の中に犯人がいることで人数は絞られているので読者が混乱することは少ないが、途中で被告が夫から妻に変わったことにあれ?
 さらにその被告の無実を証言するのが、担当主任の警部補ということに驚くことに。
 結局誰が真犯人であるか、それはこの八島産業の大富豪の家庭内での世界であるだけにそこに飛び込んでいった”ミミィ・ローイ”の本当の人柄が動かすことになったということか。
 なんとなく作品が出版された時代感覚を彷彿させる印象を持った。
 

余談:

 著者の名前も知らずどうして手に取ったのか判らない。おそらく題名の「弁護側の証人」からか。こんなに古い作品とは思わなかった。でも図書館では予約が結構あった。ミステリ分野の読者は多いと言うことか。調べたら翻訳作品含め、59作品があるそうな。かなり知れ渡った著者だったのだなあ。 
背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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