読後感:
読んでいると昔読んだ村上春樹の「ノルウェーの森」に似たときに感じたようなことを感じながらの読書となり、また読み出す直前にテレビドラマで本作品を放映していて少し観たところで辞めてしまった時のことが印象に残る。
こういう作品は映像で見ると役者の印象がどうしてもまさってしまって見たくなくなる。小説では自らの想像で演出できるのでずっと好ましいから。
ちょっと理解できない片瀬夫妻と矢野布美子の倒錯した関係、でも所々では各々の人物の心情が理解できるところであり、次第にあの日の事件が起こりうる可能性を予感させる。
単なる官能恋愛小説ではなく、この先起こりうるようなサスペンス含んだ展開に、やはり読まずにはいられない出来はさすが直木賞作品。
選評を是非見たくなる。
雛子の大久保勝也に対する恋が、男が現れた瞬間突然変化し、それを見る信太郎がいままでの信太郎ではなく反応してしまう。布美子も毛嫌いするように感じてしまう。その後の雛子と信太郎の関係、布美子と信太郎の関係、雛子に対する布美子の汚らしいと感じる感情が次第にあの事件へと進行していく。そんな中、布美子の昔の学生時代の唐木の死の知らせに慟哭する布美子。
雛子の愛は肉体ではなく精神の愛との言い分には雛子にとっての解釈かも知れないが、あかされる雛子と信太郎の秘密、それを男があっさりと知ってしまっていることも布美子にとって我慢できなかったようにも思える。
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