北村薫著  『冬のオペラ』
                               

 

              2011-06-25


(作品は、北村薫著 『冬のオペラ』  文藝春秋による。)

                   

初出 
 「三角の水」   「別冊婦人公論」 1992年冬号
 「蘭と韋駄天」  「別冊婦人公論」 1992年春号
 「冬のオペラ」  「小説中公」   1993年7月号−8月号
 本書 1993年(平成5年)9月刊行。

 北村薫:
  1949年12月、埼玉県生まれ。 早稲田大学第一文学部を卒業、89年「空飛ぶ少年」でデビュー。
 91年「夜の蝉」で第44回日本推理作家協会賞を受賞。

 物語の概要: 図書館の紹介より

 名探偵巫弓彦人知を越えた難事件を即解決。身元調査等、一般の探偵業は行いません。そして記録者はわたし、姫宮あゆみ二人が遭遇した三つの事件の記録。 

 主な登場人物: 

姫宮あゆみ 叔父の姫宮不動産社長によりそこで働かせてもらっている。 物書きを目指していて、二階の名探偵事務所の記録係としての役割(女ワトソン)をになう。
19歳−20歳。
巫弓彦(かんなぎ)

名探偵と称しているが、事件の依頼はきわめて少ない。 生活費はアルバイトで稼いでいる。 40歳前後独身。
「名探偵に必要なのは幅広い知識です」のとおりの人物。

<三角の水>
佐伯志摩子 姫宮不動産の佐伯先輩の妹さん。 化学専攻の大学院生。 大学の中の企業スパイの横流しの疑いを掛けられる。
<蘭と韋駄天>
仁科さん 高校の英語の先生。 小見山さんと鏡に映したみたいに似たもの同士。 外見は対照的だが、向く方角は似ている。そしてお互い張り合うライバルの仲。
変種の春蘭で揉めることに。
小見山さん フランス語の通訳をしている。 仁科、小見山、椿雪子たちは東京の学生時代の仲間。
椿雪子 京女、独身。 大学生活は東京で送る、独身。 揉め事を側で聞いて姫宮あゆみが声をかける。
<冬のオペラ>
椿雪子 京都の私立大学のフランス語の講師。 三十くらい。姫宮あゆみが一人で京都旅行に出かけた時椿雪子と出会い殺人事件に遭遇する。
神屋秋道 椿雪子と同じ大学の文学部の助教授。
水木

椿雪子と同じ大学の文学部の教授。 椿雪子が憧れていた先生。
教授の部屋で殺されていた。


読後感 

 “円紫さんシリーズ ”や“ベッキーさんシリーズ”にも通じるところのある難事件を扱うというよりは些細なというか普段起こりそうなこと事を題材にした推理小説という風である。 ただ「冬のオペラ」の章は殺人事件なので趣は異なるが。 作品中ではやはり「冬のオペラ」が一番推理小説らしい展開で意外な犯人にチョットばかり切ない箇所もあるが、名探偵の巫弓彦(かんなぎ)の態度は冷静であり、犯人の心の内をおもんばかる気持ちには威厳さえも備わっている。

 そしてユーモアも健在、そして教養の宝庫とも思える知識も好ましい。やはりこの作家の作品に流れている雰囲気は上質である。
 それというのも、NHKのデレビ「探偵Xからの挑戦状」に北村薫作の作品“ビスケット”があった。これは名作「冬のオペラ」の18年ぶりの続編にあたるものとして書かれたことを知り、読むことにした次第である。テレビでの巫弓彦役の姿はなかなかさまになっていて雰囲気が愉しめた。

  
余談:

 この蘭を書くにあたり、いつも頭を悩ませる。すんなり浮かぶこともあれば、なかなか引き出せなかったり、また背景画も悩む。 本当は小説なんかの挿画を自分で描けたらなあと思うのだが、その才がなさそう。
そしてぴったりと合った背景画が出来上がってうまくいった時の喜びも格別。 自画自賛だが。
 
今回はテレビの巫弓彦の姿がすぐ浮かび、動画を探すことになった。

背景画は、NHKテレビ”探偵Xからの挑戦状”Season3 「ビスケット」での巫弓彦の姿。

                    

                          

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