北村薫著  『覆面作家シリーズ』 
                   「覆面作家は二人いる」
                   「覆面作家の愛の歌」
                   「覆面作家の夢の家」


 

                2011-08-25


(作品は、北村薫著 『覆面作家シリーズ』 中央公論新社による。)

      

◇覆面作家シリーズ三部作
1)覆面作家は二人いる
2)覆面作家の愛の歌
3)覆面作家の夢の家

1)覆面作家は二人いる
初出 1997年(平成9年)11月角川文庫刊
本書 2002年(平成14年)2月刊行。
・覆面作家のクリスマス   ・眠る覆面作家    ・覆面作家は二人いる
2)覆面作家の愛の歌
初出 1998年(平成10年)5月角川文庫刊
本書 2002年(平成14年)10月刊行。
・覆面作家のお茶の会  ・覆面作家と溶ける男   ・覆面作家の愛の歌
3)覆面作家の夢の家
初出 1999年(平成11年)10月角川文庫刊
本書 2003年(平成15年)2月刊行。
・覆面作家と謎の写真   ・覆面作家、目白を呼ぶ   ・覆面作家の夢の家

北村薫:
 1949年12月、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業、89年「空飛ぶ少年」でデビュー。
 91年「夜の蝉」で第44回日本推理作家協会賞を受賞。


 主な登場人物:

岡部良介
兄 優介

「推理世界」の若手編集者。 ペンネーム“覆面作家”としてデビューの新妻千秋の担当。
兄の優介は双子。 親の仕事を継いで警視庁の刑事。

左近雪絵
娘 花絵
姉 月絵

岡部の先輩。 世界社をしょって立っているという。
(「覆面作家の愛の歌」では翻訳に力を入れるためアメリカに常駐することに。)
姉の月絵はガードマンをやっている。

新妻千秋 世田谷の豪邸に住む覆面作家。 一歩門の外に出ると借りてきた猫がサーベルタイガーになる。 人格の変化は別人のよう。探偵よろしく見事な推理で問題を解決する。
(「覆面作家の愛の歌」で千秋さんの生い立ち判る)
執事 赤沼 人相は執事というよりボクサーくずれといった方が似合いそう。 お嬢様をこよなく愛している。
静美奈子

「推理世界」のライバル誌「小説わるつ」(洋々出版の看板誌)編集部に今年から配属。良介に覆面作家に紹介して欲しいとアタックする。 熱意にフクちゃん(覆面作家のこと)も作品を書くように。 歌と踊りが得意。 兄の優介がぞっこんに???(「覆面作家の愛の歌」より登場)

由井美佐子

固定ファンを持つミステリー作家。「推理世界」に尾道を舞台にした連載を始める。覆面作家に殺人事件の解決を依頼。
(「覆面作家の夢の家」に登場)



物語の概要:

・覆面作家は二人いる 
  クリスマス間近の冬、春、そして麦藁帽子の夏。それぞれの季節の中で起きた三つの事件。 日常世界に潜む謎を千秋さんは鮮やかに解き明かしてみせた。 北村薫、待望の新シリーズ〈覆面作家〉。お嬢様名探偵、誕生。 

・覆面作家の愛の歌
 ミステリ界に登場した『覆面作家』は、天国的な美貌で、大邸宅に住む20歳の御令嬢。 難事件に、信じ難い推理力を発揮する…待望のシリーズ第2弾。きっかけは、春のお菓子、梅雨入り時のスナップ写真、そして新年のシェークスピア…3つの季節の、3つの事件に潜む謎。 『覆面作家』千秋さんの推理が冴える。

・覆面作家の夢の家
 まずは自己紹介。岡部良介、『推理世界』の若手編集者。ある日編集部に送られてきた原稿が見所ありということで、作者に会いに行ってびっくり。 世田谷の大邸宅に住む、天国的な美貌の御令嬢だった。 『覆面作家』としてデビューしたが、現実世界に起こる難事件にも、信じ難い推理力を発揮する。 かくして、お嬢様に振り回される日々が続く。

読後感

 この「覆面作家」シリーズはそれぞれ3つの短編小説から構成される編集者岡部良介と覆面作家千秋が活躍するちょっと小粋な推理小説といった感じの作品である。
「覆面作家は二人いる」に掲載の「覆面家BBS」に三部作での色んな項目について人気投票の結果がのっていて、なかなかの人気作品のようで、感想とか好きなキャラとか、コメントとかがおもしろい。
 それぞれの短編小説での推理内容も面白いが、千秋のお屋敷の中でのお嬢様ぶりと外に出た時の変身ぶりの落差の大きさ、良介と兄の優介とのやりとりの妙味、左近雪江のシャキッとしていて嫌味のない言動も好ましい。

 思うにこういう作品というのは一つ間違えるととんでもない低俗(?)なものになる危険性がありそうだが、それが上品に仕上がっているのはやはり作者の人格が作品に反映されているのだろうと感心する。親しみ深くてウィットに飛んでいて教養も刺激され、可愛らしい千秋とちょっとおっちょこちょいの岡部良介とその兄優介の取り合わせがいい。
 作品群としては円紫シリーズから覆面作家シリーズへと時代は重複しつつ、ベッキーさんシリーズに続く(?)内容はカラーは残しつつ洗練されていくような感じである。

  

余談:
 色んな本をパラに読んでいると、読み合わせが必要と思う。この作品なんか他に長編とか、堅苦しい本を読んでいるとパラに気軽に読める本の最右翼。時間があるとぱらぱらと呼んでみたくなる。貴重。
背景画は、本作品の「覆面作家の愛の歌」の挿絵を利用。邸宅でのお嬢様の出で立ち模様。

                    

                          

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