平成11年第121回直木賞受賞作品。本の帯には、謎の幼時失踪事件。それは姦通という罪を犯した母親への罪なのかも知れない。人間の孤独と自由を追求する問題作 とある。
桐野夏生(なつお) 1951年金沢生まれ 成蹊大学法学部卒 1993年「顔に降りかかる雨」で第39回江戸川乱歩賞
物語の展開:
カスミと石山は不倫関係にあり、石山が北海道の支笏湖付近に別荘を買って、森脇家族と石山家族で夏休みに誘い、逢瀬を楽しもうと計画した。しかし、カスミの有香がある日突然失踪してしまい、大騒ぎとなる。カスミは有香を探すことで自分の罪を償おうとし、結局不倫もばれ、二家族はバラバラになり、その後の人生遍路が展開する。 読後感: ざらざらとした感触の小説で、しかも物語の展開が、現実と過去を行きつ戻りつといった展開。何か夢を見ているような、現実の話なのか、過去の話なのか、夢の中の話か、ふと判らなくなってしまう。 しかし、推理小説もどきの面白さと、一方で死と直面している人間の心理状態を思わせられるおそろしさが伝わってくる。 テレビに出て有香の情報を待つところ等、どうもこの世界が、宮部みゆきの「模倣犯」のイメージがつきまとってきて、懐かしいやら、複雑な気持ちに陥ってしまう。 異色の作品であることは間違いない。このあたりが直木賞の所以か?
最近の幼時殺害事件が多発している点も、厭な世の中を象徴しているようでもある。
背景画は、支笏湖と恵庭岳の風景ベースに一見絵画風にphoto shopで処理。