読後感:
この作品、題名を見た時どういう作品なのかと疑心暗鬼に。エッセイなのか、物語なのか?読み進むに連れ、両方兼ね備えたものなのかと。
でも最初に30歳の若者(主人公)が末期ガンで余命半年ないし1週間後になくなるかもの状態。死を直前に控え、果たしてどう処理するのか、自分にとっても死は避けられない年齢を迎え、どう立ち向かうか真摯な気持ちになる。
そんな中、悪魔との取引で何かを無くすことで1日の延命を与えられるという。ちょっとあり得ない話ではあるが、でも果たしてそういう状態になった時、母親がよく口にしていた言葉「何かを得るためには、何かを失わなくてはね」ということはすごく説得力があり、素直に受け入れられる。
果たして失うことになって今までのことが本当にどうだったんだろうと投げかけられている。あまりにも当たり前になってしまっていて、改めて死を前にして考え直してしまう。
小説の中で、死を前にそれまでにしたいこと10のアイテムをあげるところがある。
自分の場合はどうなんだろう。色んなことを考えさせられる。
中に記述されている例えば初恋の人に会いに行っての話、母親の死をむかえての最後の旅のこと、レタスとキャベツという愛猫とのこと、じめじめした話ではなく、さらっと、むしろ明るい展開はかえって胸に響いてくるものがある。
著者の素性を知りたくなる。なるほど、今までの仕事は小説家ではなくて映画プロデューサーか。人の内に潜む響きに敏感なのがよくでている作品である。
印象に残る表現:
死の最後に初恋の彼女に会いに行ってのやりとり:
不思議なものだ。恋愛が始まったときに、彼女と終わる日が来ることなんて想像できなかった。自分が幸せなとき、彼女も同じように幸せなんだと思っていた。でもいつしか、そうではなくなるときが来るのだ。自分が幸せでも、相手が苦しんでいるときが来るのだ。
恋には必ず終わりが来る。必ず終わるものと分かっていて、それでも人は恋をする。
それは生きることも同じなのかもしれない。必ず終わりが来る。それと分かっていても人は生きる。恋がそうであるように、終わりがあるからこそ、生きることが輝いて見えるのだろう」
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