初出 「すばる」2004年1月号から007年10月号に掛けて発表 本書 2008年4月刊行
川上弘美: 1958年東京都生まれ。お茶の水女子大学理学部卒業。 94年「神様」で第1回パスカル短編文学新人賞を受賞。 96年「虹を踏む」で芥川賞。 07年夏より芥川賞選考委員を務める。
直哉と結婚して7年。直哉に里美という愛人がいて・・・。 一体自分はどうしたいのか決められないでいる。
読後感:
著者の作品は以前にも読んだことがあるが、何かついていけなくて取り上げるまで逝かなかったような気がする。 今回題名にもひかれ、読んでみたが、相変わらずといった感じで話がつながらない、突然あっちに飛んだり、戻ったり感覚的にも現代的なのか今ひとつとらえどころがない。 でも何となく夫の直哉との夫婦の関係、愛人をつくった直哉がのゆりに対して「別れてくれないか」といったのに対し、「直ちゃんのことが好き」と言ってのゆりが怒るでもなく、かといった直哉は相変わらず遅くなってもうちに帰ってくる。 のゆりは直哉と真っ直ぐ向き合って話をしなくてはいけないと思うけれどもかみ合わないでずるずると時が経っていく。 何とも融通のつかないまったりとした展開が好いのか悪いのか。 その間に叔父に当たる真人との会話で進行状態がわかったり、若い瑛二がのゆりに言い寄ってくるのをきっぱりかわしたりと直哉以外の人間とは割に明確な態度がとれている。 やっとのゆりが別居というステージで離婚に進むのか、冷却期間を経て再び元におさまるのか? 時間がたち新しい段階にはいったことで直哉がのゆりの方に傾いてきてほんわかムードに流される雰囲気となりハッピーエンドかな? この作品の主題はなんだったのだろう? のゆりと直哉のなんともはっきりしない気持ちの揺れといったり来たりの気持ちのよさ(?)、表現のナウさが受けているのか? 自分にはあまり気に入った作家の部類とは遠い存在のようである。 ただ各々の表題にまつわる表現はそのときの何かを象徴している風で余韻のあるものである。
作風も変わっている。 会話の部分は普通「」にするか、地の文中に統一されているが、作品では「」と「」なしの語りと一緒の中にあったり、どういう思想の持ち主なのか? 会話の中の句読点がやたら細切れに入っていたり・・。 息つきを考慮してあるのか? 気になること自体おかしいのか?