主な登場人物:
俊一
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コンピューターのプログラマー。俊一はバツイチ。安普請のアパートの隣りに冴子がいて知り合う。 |
冴子 |
母親は40そこそこで身罷ったとき大学生(妹は高校生)。俊一とはこどもは作らないことで一緒になる。 |
泉 |
冴子の妹。化粧品販売員。一度は妊娠するも流産、2年ほど前子宮の摘出手術を受ける。子供を欲しがり・・・。 |
敏夫 |
泉の夫。滅多に自分から口を利くことがない、話しかければ返事はする。何を食べても美味しいとも不味いとも言わない。 |
占部夫人 |
近所の薬局の奥さん。「うちの主人がおじゃましておりませんでしょうか」と奇行をすることで噂の人。 |
坂口 |
俊一の会社の同僚。 |
松尾 |
俊一の会社の同僚。末期ガンで仕事を辞め自己免疫だけを頼りに旅行に出かけたと坂口からの情報。 |
読物語の概要:(図書館の紹介記事より)
ふたりで、ここにいる…。精神的な破綻を来した妻の狂いの道行きに惑い、揺れ動きながらも、ひたすら寄り添うことを決意した男の愛と漂泊の物語。読む側の場所を揺さぶる、片山恭一の最新長編小説。
読後感:
何気ない夫婦の会話、しかし次第に妻の様子が壊れだしていくような予感を伴って。読んでいく内に冴子と俊一の夫婦になったいきさつ、冴子夫婦と泉姉妹夫婦との間の約束事、冴子と俊一のあいだのわだかまり、泉と敏夫夫婦のなかのわだかまりがにじみ出してきて夫婦とは何なのか、そして死をめぐる考えの差?が突きつけられるように感じる。
普段の夫婦の間のやりとりが何ごともない時のものがごくごくなごみのある好ましいこと故に、時折織り込まれる風が吹いているような気持ちの表れにぞくっとさせられる。
夫婦の間でこんな風なやりとりを行っているだろうかと自分のことを反省させられたり。
それにしても子供を産める、産めないが女性にとって深く内面に影響を及ぼしているとはそして夫婦というものが子供を介して成り立っていることの意義を改めて感じさせる内容に、小説のような状態になったときに如実に突きつけられていることを感じさせる。
ラストの冴子と俊一が俊一の故郷を目指して帰省をする場面、その時の会話や情景が何故か愛おしくずっと続いて欲しいような情感に包まれた。
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