カルロス・ルイス・サフォン著
                     『天使のゲーム』




                      
2013-01-25


 (作品は、カルロス・ルイス・サフォン著『天使のゲーム』 集英社文庫による)  


               
 

 本書 2012年(平成24年)7月刊行。

 カルロス・ルイス・サフォン:(本書より)
 
 1964年、スペインのバルセロナ生まれ、ロサンゼルス在住。執筆活動のほか、フリーランスの脚本家としても活躍。1993年のデビュー作「霧の王子」でエデベ賞を受賞。本書は5作目の小説で、フェルナンド・ララ小説賞準賞(2001年)、リブレテール賞(2002年)、バングアルディア紙読者賞(2002年)を受賞。
 
 木村裕美:
 東京生まれ、上智大学外国語学部イスパニア語学科卒。翻訳家、マドリード在住。

物語の概要(本書の裏表紙文より)

 1917年、バルセロナ。17歳のダビッドは、雑用係を務めていた新聞社から、短編を書くチャンスを与えられた。1年後、独立したダビッドは、旧市街の“塔の館”に移り住み、執筆活動を続ける。ある日、謎の編集人から、1年間彼のために執筆するかわりに、高額の報酬と“望むもの”を与えるというオファーを受ける。世界的ベストセラー『風の影』に続いて“忘れられた本の墓場”が登場する第2弾。

主な登場人物たち

ダビッド・マルティン 作家。17歳の時は“産業の声”新聞社で働いていた。

センペーレ
&息子

古書店(「センペーレと息子書店」)の店長。息子も。
グスタボ・バルセロ 父(センペーレ)の古くからの友人。古書店主。
イサック・モンフォルト 「忘れられた本の墓場」の管理人。
パシリオ・モラガス “産業の声”新聞社副編集長。
ペドロ・ビダル バルセロナの富豪の御曹子。
クリスティーナ

ビダルの秘書。マルティンと愛し合っていたが、ビダルと結婚。
やがて非情な運命に。

アンドレアス・コレッリ 謎の編集者。マルティンの雇い主。
イサベッラ マルティンのアシスタント。作家になりたい夢を持ちつつ、アシスタントをやりながらも母親のような役回りも。

ディエゴ・マルラスカ
妻 アリシア・マルラスカ

「塔の館」の以前の持ち主。
イレーネ・サビーノ マルラスカの愛人。
セバスティアン・バレラ 弁護士、マルラスカの共同経営者の息子。
ビクトル・グランデス 警察本部の刑事。
リカルド・サルバトル マルラスカ事件の元担当警官。
ソモロストロホの魔女 ボガデル海岸に住む巫女。

 (補足) バルセロナ スペインの首都マドリードに次ぐ大都市。

読後感:
 

『風の影』で興味を引かれ、最近刊行された本書を読む。物書きを扱う作品には何故か興味があり、主人公のダビッドが奇妙なオファーを受けた作品作りに至る過程もなかなか謎のある展開である。

 そんな中、ダビッドのアシスタントとなるイサベッラの、そこに至るまでのダビットへの接し方とアシスタントになってからの彼女の言葉のやりとりや変化する様子がなかなかおもしろく感じられる。

 さて、『風の影』で登場していたセンペーレと息子の書店、バルセロの古書店、“忘れられた本の墓場”といった人や場所、はたまたバルセロナの地図にも共通した箇所が随所に出てきて、なんだか馴染みの場所のように感じて、読み心地もこの上ない。
 さて下巻ではどのように展開していくか楽しみである。

 上巻と下巻の入手に大分間が空いたので、上巻のうっすらとした想い出しかなくなっていた。下巻は何となく読みやすくなったような感じも。
 マルティンとイサベッラのやりとりはおもしろく、一方愛し合っていたマルティンとクリスティーナの間は奇妙なことに展開していく。そして謎の雇い主との関係は次第に毛嫌いする方向へと向かう。謎も増し、次々とマルティンの周りの人間が死を遂げていく。

 ゲームなのか??
 あの「風の影」のラストの激しい展開が期待されて、・・・
 さて、下巻の最後に「訳者のあとがき」があるが、それを読んでみて、いかに自分が読み方が浅はかだったかを気づかされる。前作の「風の影」もそう感じたが、本作品もやはりもう一度読み直してみないといけないなあと感じてしまった。

 奥深い作品であることに又の機会に挑戦してみたい。
 


余談:

 はっきりいって「風の影」の方が断然面白かったかなと。憎まれる対象がはっきりしていること、今回の場合、ディエゴ・マルラスカなる人物像がうまく結べなかったのが大きいかなと。ただ、前作と地理的内容がバルセロナと同じでなんだか馴染みの場所であることが親近感が持て、やはり舞台が身近に感じられる展開は親近感があっていい。

背景画は本書にも出てくる路面電車のフォト(インターネットから)を利用。

                               

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