角田光代著 『夜をゆく飛行機』






                
2011-03-25



(作品は、角田光代著『夜をゆく飛行機』 中央公論新社 による。)

               
 

 初出 「婦人公論」2004年8月から2005年11月掲載。
 本書 2006年7月刊行


 角田光代(かくたみつよ)
 1967年神奈川県生まれ。 早稲田大学第一文学部卒業。90年「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞、96年「まどろむ夜のUFO」で野間文芸新人賞、98年「ぼくはきみのおにいさん」で坪田譲治文学賞、「空中庭園」で婦人公論文芸賞、05年「対岸の彼女」で直木賞、06年「ロック母」で川端康成文学賞を受賞。その他の著書多数。


主な登場人物:
 

谷島家の家族
父 謙三
母 美佐子
長女 有子
次女 寿子
(ことこ)
三女 素子
(もとこ)22歳
末っ子 里々子
17歳(私)

父が営む酒店。駅の北口に1ヶ月後に新規スーパー開店が決まり影響を受けそう。
・父は学歴コンプレックス、母は良家の子女コンプレックス。
・有子 結婚して家を出ている。夫 良輔。8年前突然的場ヤロー(その時交際していた他校に通う同学年の男の子)と駆け落ち。 その後連れ戻された後変わってしまい、高校卒業すると就職、良輔と結婚する。
・寿子 変な子ども。「下町のロビンソン」で小説飛雲新人賞を獲得する。 内容は谷島家の暴露本。 作家を目指す?
・素子 男女共学の大学4年生。1年留学が決まりそう。
・私 高校3年生。 私が4歳の時怪我、母が階段から転げ落ち、お腹の赤ん坊がいなくなる。 私、ぴょん吉と名付けて物干し台で飛行機を眺めては一人ごつ。

親戚筋

・ミハルちゃん 父の妹 大晦日の二日前、新宿のデパートで買物最中ばったりと倒れ、病院には子バレルもなくなる。父、正月は普通にやるぞと宣言。・・・・
・浩二おじさん 父の兄。

松本健 I大学の大学生。谷島酒店に発泡酒をよく買いに来る内、私と話をするように。
篠崎怜二 22歳の大学生。私が浪人していたとき、アルバイト先の私が恋をした相手。でも・・・。

物語の概要:(図書館の紹介文より)
  
 谷島酒店一家の末っ子・里々子には、三人の姉と生まれなかった弟がいて…。どうしようもなく、家族は家族。古ぼけていて、うとましくて、限りなく懐かしい、家族の物語。直木賞受賞後初の長篇小説。
 

 

読後感:

 谷島酒店の家族の様子を末っ子の里々子を語りの主人公にして実に細やかで優しさに満ち、ユウモアたっぷりに描いていて、ほほえましくもあり、ちょっぴり切なくて先に読んだ「八日目の蝉」や「対岸の彼女」と全く異質の作品に触れた思いである。ちょうど似たような思いを宮部みゆき著の「小暮写真館」で味わったなあと。

 私の三人の姉それぞれの性格はけなしたり、相談に乗ってくれたりと家族の思いやりがあちこちに覗き、特に長女の有子に会いたいと思う気持ち、そして有子の見ているところ、するどい指摘とどうにもならない様子がひかる。
 寿子の受賞してからの何となく苛ついたり、暗い顔をする様子、第二作も受賞が決まって果たして作家としてこの後やっていけるのか不安な様子が見て取れるのも分かるし。

 素子が一番生活力がたくましい感じがするし、私とのコンビ、父親とのコンビ、そして行動力は一家を支えているのかも。
 末っ子の里々子は、自分はいつものけもの扱いで頼りにされていないと嘆くけれど、やっぱりみんなに一番愛されているのではないかと見えてしまう。
 

   


余談:
 角田光代作品って、含蓄が深いというか心に響くものを感じさせてくれる。 気持ちが落ち込んでいるときに読みたくなる。
背景画は本作品の内表紙を利用して。
 

                               

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