角田光代著 『ひそやかな花園』



              2016-11-25



(作品は、角田光代著 『ひそやかな花園』   毎日新聞社による。)

          
 

  初出 毎日新聞日曜くらぶ2009年4月5日〜2010年4月25日
     単行本化にあたり加筆、修正。     
 本書 2010年(平成22年)7月刊行。


 角田光代(本書より)
  
  1967年、神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。
 90年「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。
 96年「まどろむ夜のUFO」で野間文芸新人賞、
 98年「ぼくはきみのおにいさん」で坪田譲治文学賞、
 「キッド・ナップ・ツアー」で99年産経児童出版文化賞フジテレビ賞、
 2000年路傍の石文学賞、03年「空中庭園」で婦人公論文芸賞、
 05年「対岸の彼女」で直木賞、06年「ロック母」で川端康成文学賞、
 07年「八日目の蝉」で中央公論文芸賞を受賞。
 著書に「三月の招待状」「森に眠る魚」「くまちゃん」など多数。

  

主な登場人物:


<サマーキャンプに参加の子供たち>
サーちゃん 牧原紗有美(さゆみ) 友だちがいない。“すぐにすねて泣くサーちゃん”
ジュリー 船渡樹里 年かさの女の子。
ユウくん 久米雄一郎 “果敢で、マイペースで、やさしかったユウ”
ケンちゃん 松澤賢人(けんと)“ちいさな女の子といつもいっしょにいたケン”
ノンちゃん 香田紀子(のりこ) 人見知りの女の子。ケントと気が合う。
ハルさん 野村波留 髪を短く切った日に焼けた笑顔の女の子。“男の子といっしょになって遊んでいた、年齢よりうんと物知りだったハル”
早坂弾 一目置かれる子供。クール。金持ちの子。

牧原紗有美

母との二人暮らし、母の嘘つきに嫌気、20歳の時からひとり暮らし始める。母親に男の影を見る。

船渡樹里
夫 敦
(あつし)
母 涼子

美大卒業、デザイン事務所所属していたが手術後辞めフリーランス。
早坂弾とは弾の友達名で手紙のやりとりをしていたが、転居先不明で戻ってくる。
夫はできた男と評されている。

久米雄一郎
母親 俊恵

分岐点は中学卒業式で父親の「捨て子」という言葉。高校を辞めバイトを転々。2DKのひとり暮らしで女の子を泊める“泊め男”に。

松澤賢人
母親 鈴木の姓
夫 

高校卒業と共に家を出てひとり暮らし。広告代理店勤務。資料に船渡樹里の名を見て会うことに。賢人は母親から秘密を聞いている。
夏のキャンプが無くなった年、父と母は離婚。母親は見知らぬ男と結婚し茉莉香を生む。賢人は旧姓の松澤を通す。

香田紀子
夫 慎也
子供 あゆみ

翻訳物を多く扱う出版社に。
夫は中高生向きの教材を扱う出版社勤務。
両親から出生の秘密を聞かされ、夫に内緒で皆と山荘で会う計画。

野村波留
母親 香苗

大手レコード会社を辞め、独立して小さな会社設立。ミュージシャンに。
牧原紗有美からの「キャンプでのハルさんでは」の手紙に会うことに。
遺伝性に関係のある目の病気が見つかり、失明の危険性があり父親探しを切望。

早坂弾
母親 碧
(みどり)
父親 眞美雄

夏のキャンプの別荘は弾の家の物。樹里と手紙のやりとりをしていたが親には知られないよう別名で出すよう言う。
半田憲尚 軽井沢にある「光彩クリニック」の院長。
野谷光太郎 作家。賢人たちから「光彩クリニック」のスタッフとコンタクト取りたいの依頼に、交換条件としてドキュメントを書かせてくれないかと。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 きらめく夏の日々に隠されていた衝撃の真実。世界に立ちすくんだ時、私を助けてくれるものは何だろう…。親と子、夫婦、そして家族でいることの意味を根源から問いかける。衝撃と感動に震える最高傑作。

読後感


 5〜6年続いた一年に一度の夏のキャンプに集まった親と子供たちの非日常の一コマ。それぞれの子供たちにとってのその思い出は忘れがたい物であったが、しかし親たちも子供たちも連絡先は知らないし、どういう集まりなのかも教えない。ただ日頃の両親たちの笑顔や様子はとてもいつもに見られない表情や行動に子供たちは日頃の様子との違いに驚くばかり。

 ところがそのキャンプがある年から完全に無くなった。
その後は子供たちは年を重ねてあの当時のことをそれぞれの思いでコンタクトを取り始め、何故あの集まりが何であったのかを知ることに。

 子供たちの環境はもちろんそれぞれ違い、親子の関係、親の夫婦の姿も異なる。そしてある者は両親から自分の出生の秘密を話され、知らない者は関係者たちからの話で知ることに。
知ったことで父親のことを知りたがる者、怖がって距離を置く者とか。

 サマーキャンプに参加した子供たちの群像劇である。そして次第に夫婦の子供を持つことに対する意識の持ち方、どうしても欲しいのか、どういう事を期待しての行為だったのか。また子供たちはそんな親に対してどう向かい合ったり、思ったりしたのかといろいろと悩む。ラストになるに従い著者の思いがひしひしと伝わってきて感動に震える作品であった。

  

余談:

 話の展開は割と短い区切りでキャンプに参加の子供たちの間でそれぞれの組み合わせやクロスした組み合わせで展開するため、覚え書きをメモしていかないとつながっていかない。なかなか大変だった。
 樹里にせよ、紀子にしろそれぞれが調べる出すことでそれぞれの道を見つけて行けたことに希望を見つけられたし、自分も勇気をもらえたことがあった。

背景画は、清流をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

                    

                          

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