梶永正史著 
            『特命指揮官 』






            2014-11-25




 (作品は、梶永正史著 『特命指揮官』   宝島社による。)

                

 単行本化にあたり、第12回「このミステリーがすごい!」大賞作品、梶永正史「真相を暴くための面倒な手続き」に加筆。
 本書 2014年(平成26年)1月刊行。
 
 梶永正史:(本書より)

 1969年山口県長門市生まれ。神奈川県横浜市在住。山口県立美祢工業高校機械化卒業。現在はコンピューターメーカーに勤務。 

主な登場人物:

郷間彩香(32歳)
父親 陽平(没)

警視庁捜査二課、警部補。男手一つで育てられる。渋谷の新世界銀行立て籠もり事件の交渉役に犯人側より指名される。
父親は元刑事、警部。野呂の古い友人。

野呂
妻 光子

刑事部長、警視監。警察庁から警視庁に出向2年。郷間彩香にとっておじさん。
妻の光子にとって彩香は娘のようなもの。

後藤 SIT隊長、警部。縄張り意識の強い男。新世界銀行立て籠もり事件に指揮官のつもりでいたのに・・・。
吉田(40代半ば) 警察庁、警視長。長官の指示で人質立て籠もり事件にSATを一人連れ視察に訪れてくる。
如月(きさらぎ) SATの狙撃手、巡査部長。SATは警備部に属し、ハイジャックやテロ対策に従事。
警察庁のお偉いさん

・桑名長官。
・百瀬次長、警視監。
・佐伯官房長、警視監。

國井 元警視庁捜査二課の刑事。人質立て籠もり事件の主犯人。
丸山(50歳) ジャーナリスト。今は小さな仕事で食いつないでいる。
伊藤 救民党元代表(90歳越え)
寺内 新世界銀行会長。


◇ 物語の概要: 図書館の紹介より 

渋谷のデパート内の銀行で立てこもり事件が発生。贈収賄などの知能犯を追うため電卓ばかり叩いている“電卓女”に、現場の指揮をとるよう特命が下り…。
〈受賞情報〉「このミステリーがすごい!」大賞(第12回)

読後感: 

「このミステリーがすごい!」大賞受賞だけあっておもしろい。主人公の郷間彩香のキャラクターが好いし、強面のSITの後藤隊長の粗雑な言動とは裏腹に、彩香をバックアップする姿が頼もしい。それを警察庁からの吉田が第三者の立場から後藤の仕草について彩香に告げる方法も小憎らしい。

 そして未経験分野での弱い立場でありながら、真っ正面から立ち向かっていく彩香も好ましい。また己の心情を言外に描写する手法はユーモアもちりばめられ、極上のミステリー作品になっている。
 さて巨大な悪にどう立ち向かっていったかは後半のお楽しみ。

 主犯の國井、ジャーナリストの丸井の行動も人間味あふれていてどぎつい描写がないのも好ましい。
 どうも好ましいことばかりであるが、こうなってくると不満な点も出てきておかしくない。あまりに心地よいので逆にラストに入っていくところで間延びというか、緊張が一端途切れてしまった後の展開は前半が面白かっただけに、ちょっと物足りなくて残念というところ。贅沢かな・・・。

  

余談:

 選考委員の言葉が載っているが、現実には考えられない常識をことごとく打ち破る逆転の発想で描写されているが、それにも増しての痛快なキャラを褒める言葉には納得。
 

 背景画は、舞台となった新宿交差点の風景。