梶永正史著 『ガバナンスの死角』





                  
2015-11-25






(作品は、梶永正史『ガバナンスの死角』       宝島社による。)


          

 
 本書 2015年(平成27年)7月刊行。

 
 梶永正史:(本書より)
 
 1969年、山口県長門市生まれ。神奈川県横浜市在住。山口県立美祢工業高等学校機械科卒業。現在はコンピューメーカーに勤務。第12回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、「警視庁捜査二課・郷間彩香 特命指揮官」(宝島社)にて2014年デビュー。

主な登場人物:

郷間彩香

警視庁捜査二課特別捜査第15係主任、警部補、33歳。<芸人型>
主に詐欺犯罪を担当する係。

彩香の部下
<>内は人間のタイプ

・秋山康弘(通称 やっさん) 最年長の警部補。<芸人型>
・鈴木圭介 元水泳の国体選手、30歳。前の班でも同じ。<情調型>
・三浦雄斗 理路整然と物事を考える。<思索型>
・佐藤健一 鈴木より3期先輩。<指示型>・

上長たち

・吉田刑事部長。
・高田圭捜査二課課長、警視正。
・富所智也管理官、警視。
・木村孝太郎係長 3つの班をまとめる警部、29歳。

佐竹

神奈川県警、警部。定年間近。
・桜田

笠井聡

亜秀商事取締役常務。CSR推進本部の執行役員。(コーポレートガバナンス社内統制、コンプライアンスや社会貢献を推進する部署)
唯一岩本社長に苦言を呈することの出来る人物。
亜秀商事は5年前、亜細亜商事と秀和商事が合併して生まれた会社。

岩本哲史

亜秀商事代表取締社長。笠井とは同じ大学で出会い、二人で小さな町工場を立ち上げた30年来の付き合い。商才や交渉術に猛る。
・高杉茂会長 岩本が町工場時代、事業が傾いたとき当時亜細亜商事社長の高杉に助けられた。3年前高杉が会長、岩本が社長に。
・若田純代(スミヨ)副社長 強硬・改革派。
・中島亮副社長(秀和出身) 外務省OB。穏健・保守派。

峯五郎 取締役専務、経営企画本部本部長兼務、50過ぎ。秀和商事出身。笠井たちが研究開発で資金面で窮地に陥ったときに救ってくれた。
新田清一 峯の部下。5年前亜秀商事として合併した秀和商事側の事務担当者。傷害致死で有罪、出所後厚木市内でタクシー運転手。自殺?する。
三谷 5年前亜秀商事として合併した亜細亜商事側の事務担当者。笠井の部下。傷害致死の被害者。

宮崎奈緒美
娘 紗弥花

母子家庭、2年ほど前、娘の心臓病の移植手術で2億円の寄付金を受け、海外で手術。新田が死んだ時靴下から宮崎親子の写真が出てきて新田との関係が疑われる。
八木圭子 三谷の婚約者、41歳。五業銀行ホールディングス勤務。新田のストーカー。
泉谷

東京地検特捜本部の人間。亜秀商事を不正の巣窟として調べている。
笠井に「社員の皆さんを守れるのはあなたしかいない。藪医者にやらせると取り返しがつかなくなりますよ」と協力要請。

佐古 暴力団双頭会の元幹部。宮ヶ瀬のコンビニに現れた男。
天野

両替に現れた男。


物語の概要:
 図書館の紹介より

 親の敵のように電卓を叩きまくる“電卓女”こと郷間彩香が、思いもよらぬ形で大型贈収賄事件に迫っていく…。『このミステリーがすごい!』大賞受賞作「特命指揮官」の郷間彩香、再び。

読後感: 

 ほぼ1年前に読んだ「特命捜査官」での郷間彩香なる刑事が今や警視庁捜査二課特別捜査第15係の主任となって、総勢5名の班の主任として管理職の立場での捜査に。
 部下の面々はそれぞれ4つの人間のタイプに分かれる個性的な集合体。そこで”魚心”なる管理職の心得よろしくその場その場での対処の仕方を参考にのたまわるのだけれど・・・。

 特に組織犯罪対策三課から来た秋山はチーム最年長、節度なく、勝手気ままに動き、仲間を手下のように使う一番扱いづらい芸人タイプ。ちなみに彩香自身、ストレスを受けた際に攻撃的に、勘で行動する芸人型。
 しかししかし、この秋山とのコンビネーション、やりとりだけでも結構面白く、一番頼りになる様子。
 さらに彩香の時々の心の内のつぶやきが妙を得ておもしろい。

 さて事件の方はというと二課が亜秀商事の贈収賄に総力を挙げて取り組んでいるときに、峯が会社のクレジットカードを私用に10万円使い込みを調べることになった郷間班が、峯の人物像を明らかにすることから調べる中で部下の新田の致死傷害事件に突き当たる。新田のことを調べる内に切り口が「何故新田が自殺(他殺にしろ)しなければならなかったのか、どう生きたかを知る必要がある。何に命をかけたのか」とその人物像を明らかにすることがこの事件を解く鍵になるとの思いが、警視庁と犬猿の仲という神奈川県警の佐竹警部をも動かし、真相追究にたどりつくことに。そのあたりの展開も心地よい。

 物語は各章の中で彩香、笠井、佐竹の側からの描写が★、*、※で展開されていて判りやすい。

   
余談:
 
 先の「特命捜査」では筋が明確で判りやすかったが、今回の事件はなかなか複雑に絡み合っているとと共に、捜査二課内部のいざこざ、郷間班の人間模様、警視庁と神奈川県警の犬猿の仲での葛藤、合併の秀和商事の内部模様、郷間彩香の恋い模様、新田と宮崎親子の関係、麻薬がらみ、不正の証明とか色んな要素があるだけになかなか読み応えがあって、最後まで楽しめた。

              背景画は作品中の亜秀商事の執行役員である笠井が執務していたビルの前にある亜秀商事の本部が入る
             六本木ヒルズビルの外観。                        

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