◇ 読後感:
三条隆史の父の巡査長が、同級生向田伸人の父の向田刑事に銃を奪われ撃ち殺された事件。その後向田刑事は逃走、姿をくらます。残された隆史と伸人は被害者と加害者の家族に。
当然仲の良い友達というわけにはいかず、隆史は犯人を捕まえるため警察官を目指す。伸人は自分が殺したのではないけれど逃げて姿をくらます父の犯行とは信じないけれど隆史に対しては卑屈にならざるを得ないし、合わせる顔もなく逃げるような世界に明け暮れることに。さらに三人仲の良かった麻衣の立場も変化を遂げることに。
描写は隆史と伸人からの立場で交互に、時間と共に過ぎ去り展開していく。
展開もスッキリしていて混乱することもなく進んでいくのがわかりやすい。13年後の柴崎刑事部長狙撃事件で第二幕が切って下ろされ、ラスト近くになりことの真実があぶり出される。
狙撃事件でコンビを組む森口刑事の万事にいい加減な様子であったのに、捜査が核心に近づいてくるときに示される行動は頼もしい先輩刑事のさまが頼もしい。
◇ 印象に残る場面
高校を卒業してすぐに警察官採用試験を受けようとしていた隆史に叔父が説得した言葉:
「行路難、水に在らず、山に在らず、只人情友覆の間に在りだ」
「君の進路を阻むのは環境じゃない、君自身の迷いってことさ。隆史君の、そうだな、覚悟を聞かせて欲しいんだよ」
「簡単に言えば、父の敵をこの手で捕まえたい。それだけです」
「それが目的なら、視野が狭すぎるよ。」と視野を広げるため大学に進学することを勧める。)
・長い間行方不明だった親父が真友の大友のことについて隆史に語る言葉:
「伸人。真の友とは、側にいるヤツじゃない、遠く離れていても関係ないんだ。ふと、あいつならどうするだろう、あいつならどう言うだろうと思い浮かべられるヤツのことをいうんだ。そう俺は思っている。逃亡している間、九州にいても広島にいても、何かあると俺は大友のことを思い出していた。大友だったらこうするかもしれない、と思って行動したことだって何度もある。心の中の大友に随分叱られたよ」
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