鏑木 蓮著 『 真友 』





                 
2015-02-25




(作品は、鏑木 蓮  『真 友 』        講談社による。)

            

 本書 2011年(平成23年)10月刊行。書き下ろし作品。

 鏑木 蓮:(本書より)
 
 1961年、京都市生まれ。仏教大学文学部国文科卒業。2006年「東京ダモイ」で第52回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。著書に「屈折光」「エクステンド」「思い出探偵」「救命拒否」「白砂」「見えない鎖」「思い出をなくした男」があり、本書が九作目。

◇ 主な登場人物:

三条隆史(たかし)
父親 
妹 奈緒

隆史と伸人は同級生、両方の父親は警察官(交番の巡査長と刑事)。父親が殺害され、犯人を捕まえるため警察官を目指す。
・父親は交番勤務の巡査長。銃を奪われ、撃ち殺される。
町の人からは非常に慕われていた。
・母親は夫の死後、ショックで記憶障害に。
・奈緒は伸人に好意を持ち、撮影所の女優を目指す。

向田伸人(のぶと)
父親
母親 冴子

隆史とは麻衣と共に三人仲良し。三条の父親が撃たれ刑事の父親が姿をくらました後は後ろめたさからヤクザまがいの裏の世界にも。撮影所の美術に興味があり、画家か漫画家を希望。京都太秦の美術部で助監督の指導を受けつつも・・。
竹内麻衣 隆史と伸人とも仲良し。
大友

向田刑事の先輩刑事であり、伸人に陰になり日向になり支援する。現在は組対三課の警部。

木俣 三条巡査長が銃で撃たれた時の交番勤務の後輩、撃たれた側に居た。現在は京都府警の警部補。
柴崎 当時捜査4課の管理官。現在は京都府警刑事部長、警視正。
森口 京都府警東山署の刑事、巡査部長。柴崎警視銃撃捜査で三条隆史とコンビ(37歳)。進級も諦めムードの万事いい加減。
岡安 京都三条署刑事課長。
五島猛造 京都映画撮影所の助監督。伸人の指導役。
柏山浩子 三条巡査の交番近く中央市場の中の定食屋勤務。美人で根が真面目の看板娘。タレコミではK大学農学部の学生に大麻を栽培させているという。
宝厳和尚 瑞宝寺の住職。香木の輸入元。瑞宝寺は柴崎刑事部長狙撃の起きた現場。


◇ 物語の概要:(図書館の紹介記事より)

 父を殺された14歳の冬。容疑者は親友の父親。刑事による警官殺し。若者2人の人生は激変し、2度と交差しないはずだった。さらなる事件が起きるまでは…。乱歩賞作家が射止めた、会心の感動ミステリー。

◇ 読後感:

 三条隆史の父の巡査長が、同級生向田伸人の父の向田刑事に銃を奪われ撃ち殺された事件。その後向田刑事は逃走、姿をくらます。残された隆史と伸人は被害者と加害者の家族に。
 当然仲の良い友達というわけにはいかず、隆史は犯人を捕まえるため警察官を目指す。伸人は自分が殺したのではないけれど逃げて姿をくらます父の犯行とは信じないけれど隆史に対しては卑屈にならざるを得ないし、合わせる顔もなく逃げるような世界に明け暮れることに。さらに三人仲の良かった麻衣の立場も変化を遂げることに。

 描写は隆史と伸人からの立場で交互に、時間と共に過ぎ去り展開していく。
 展開もスッキリしていて混乱することもなく進んでいくのがわかりやすい。13年後の柴崎刑事部長狙撃事件で第二幕が切って下ろされ、ラスト近くになりことの真実があぶり出される。

 狙撃事件でコンビを組む森口刑事の万事にいい加減な様子であったのに、捜査が核心に近づいてくるときに示される行動は頼もしい先輩刑事のさまが頼もしい。

◇ 印象に残る場面

高校を卒業してすぐに警察官採用試験を受けようとしていた隆史に叔父が説得した言葉:

「行路難、水に在らず、山に在らず、只人情友覆の間に在りだ」
「君の進路を阻むのは環境じゃない、君自身の迷いってことさ。隆史君の、そうだな、覚悟を聞かせて欲しいんだよ」
「簡単に言えば、父の敵をこの手で捕まえたい。それだけです」
「それが目的なら、視野が狭すぎるよ。」と視野を広げるため大学に進学することを勧める。)

・長い間行方不明だった親父が真友の大友のことについて隆史に語る言葉:

「伸人。真の友とは、側にいるヤツじゃない、遠く離れていても関係ないんだ。ふと、あいつならどうするだろう、あいつならどう言うだろうと思い浮かべられるヤツのことをいうんだ。そう俺は思っている。逃亡している間、九州にいても広島にいても、何かあると俺は大友のことを思い出していた。大友だったらこうするかもしれない、と思って行動したことだって何度もある。心の中の大友に随分叱られたよ」

余談:

 被害者と加害者という設定の作品を読んだことがあったが、それが何だったのかが思い出さない。過去の読んだ作品としての履歴としてホームページ上を繰ってみてもそれらしきものを探し出せない。原稿を作らなかったのか?とも。もう少し書き方を考えないといけないかも。思い出せないのがくやしい!

背景画は三条隆史の妹奈緒が女優を目指し参った芸事の神様車折神社(くるまざき)の様子。 

                    

                          

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