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　　　　　　　　　　　　　　2021-03-25

（作品は、鏑木蓮著『見えない轍』　　　　　　　潮出版社による。）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　

　　

　　初出　本書は「潮WEB」2016年11月～2018年6月で連載されたものを単行本化。
　　本書　２０１９年（平成３１年）４月刊行。

　鏑木蓮（かぶらぎ・れん）：（本書より）　　

　1961年京都市生まれ。佛教大学文学部国文学科卒業。2006年に「東京ダモイ」で第52回江戸川乱歩賞受賞。著書には「屈折光」「時限」「思い出探偵」「エンドロール」「甘い罠」「転生」「見えない鎖」「黒い鶴」など多数ある。

主な登場人物：

本宮慶太郎妻　澄子（すみこ）息子　尊（たける）	「本宮心療内科クリニック」を開設して2年。妻の実家の敷地内に自宅兼クリニック。45歳。・妻の澄子は看護師。6つ年下。
沢渡恭一（さわたり・きょういち）	慶太郎の高校時代の友人。経営コンサルタント。

棚辺春来（はるき）母親　春美（はるみ）	患者は感性が鋭い16歳の女子高生。新聞記事の小倉由那自殺説にそんな筈はないと。・母親　急に食べなくなったとクリニックに連れて来る。
小倉由那	スーパーマーケット「ハッピーショッピー」に務めるアルバイト店員、34歳。自宅アパートで死んでいるのが発見される。平岡真理子を師匠と仰ぐ。・姉　大槻摩耶　実家の綾部で夫と喫茶店「とちのき」を営む。
名田正太（なだ・しょうた）	父親が営む「ハッピーショッピー」の一人息子、39歳。“ぼん”と呼ばれる専務。
「ハッピーショッピー」関係者	・店長　名田正太の父親。・平岡真理子　惣菜部の主任、正社員。バツイチで真一という息子が居る。真理子の師匠は惣菜部の味を作った井東サワ（71歳）・桑山三郎　警備員、26歳。由那の住む同じアパートの向かいの部屋に住む。
熊井哲治	奈良県生駒市に食品リサイクル会社「熊井産業」を創設。

光田洋平（みつた）	毎読新聞の若い記者。沢渡恭一の大学時代の後輩。
尾藤博（ひろし）	由那の大ファン、40歳。大企業の経理部勤務。ストーカーまがいの行為。本宮慶太郎の患者に。
白波瀬友希子（しらはせ）	小倉由那の友人で、幼稚園から高校まで一緒。結婚して山梨県石和に住む。

物語の概要：（図書館の紹介記事より。）

　京都の小さな町で、ひとり暮らしの女性・小倉由那の遺体が遺書らしきメモとともに発見された。それから数日後、同じ町で心療内科を開業する慶太郎のもとを、女子高生の棚辺春来が訪ねてくる。春来は「由那は自殺なんかしていない」と訴え…。

読後感：

　心療内科医師本宮慶太郎の元に、16歳の女子高生の患者（棚辺春来）が母親に連れられて訪れて来る。急にものを食べなくなってしまったと。
　春来自身は小児麻痺の後遺症で左足が悪く大好きなダンスを諦めていたが、ダンス教室に通うか迷っていたときに、電車の窓から見ていたら、その日に限って彼女（小倉由那）が手を振って、ぐっと握り拳を作った。そんな彼女（小倉由那）が、新聞記事によると自殺をしたとは信じられないと。
　そんなことから、慶太郎が患者のために高校時代の友人（沢渡恭一）の伝を使って調べ出すことから物語が始まる。

　舞台はスーパーマーケット“ハッピーショッパー”の惣菜部が人気で若いアルバイト店員小倉由那の自殺にまつわるものであるが、父親の店長の方針に対し、息子の名田正太専務の店を継ぐに当たり、この先このままではじり貧を免れないことから、なんとか食品ロスの問題をキッカケに廃棄食品の有効活用をと熊井産業の熊井との結びつきを密かに模索中。
　警察が自殺と判断したのが遺書のメモと密室の謎がある。

　そんな中、惣菜部の小倉由那に対してストーカーまがいの人物、由那に好意を持つ人物などが犯人ではの疑いも有り、刑事の事件ものとは異なり、新聞記者の光田の取材と、医師の慶太郎の診療内科的見地での推察に一風変わった展開が興味を引く。
　焦点は、遺書と見られた由那のメモと由那が大学ノートに記した日記帳の文章。その見方、解釈が事件の真相を握っていた。　

余談：

　話題中、スーパーでの廃棄食品の問題は現代の大きな課題である。
　三分の一ルールとは：最初の三分の一　小売店に届ける「納品期限」
　　　　　　　　　　　残りの三分の二　店頭に並べられる「販売期限」
　物語では、惣菜部の平岡真理子の味作りと小倉由那の味覚の鋭さが惣菜部の食品がどこよりもおいしいと評判を取っている。
　食品ロスをなくすには、販売見込みの確かさと、それによる廃棄ロスの削減、そして発注ロスを少なくすることが経営者の腕と店長の言葉。専務にはそれを担当させている。

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。