鏑木 蓮著  『エクステンド』




              2015-01-25


 (作品は、鏑木 蓮著 『エクステンド』   講談社による。)

              

 本書 2008年(平成20年)12月刊行。書き下ろし作品。

 鏑木 蓮:(本書)

 1961年、京都市生まれ。仏教大学文学部国文科卒業。卒業論文は「江戸川乱歩論」。塾講師、教材出版社・広告代理店勤務などを経て、1992年、コピーライターとして独立する。2004年、立教学院・立教大学が「江戸川乱歩と大衆の20世紀展」を記念して創設した第一回立教・池袋ふくろう文芸賞を、短編ミステリー「黒い鶴」で受賞する。2006年「東京ダモイ」で第52回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。2008年に受賞後第一作「屈折光」を刊行し、本書が三作目。
 
物語の概要:(図書館の紹介記事より)

 京都の老舗呉服屋邸で発見された首吊り死体。家主は無関係と主張するが、被害者とつながる遺留品が見つかり、供述を変える。彼の逮捕に踏み切った府警を待つ深い謎に、花街育ちの新人刑事・片岡真子が挑む。 


主な登場人物:

片岡真子 京都府警五條署刑事課の新米刑事。署内ではお嬢と呼ばれる。
坂本龍馬の姉乙女に憧れを抱いている。
高藤警部 先月から警察庁より府警本部に赴任のキャリア。東京生まれの育ち。T大法学部卒のエリート。
京都府警五條署 ・中野主任 真子の先輩刑事。
・水森班長 鑑識斑。
向井雅也
(45歳)
妻 静代
娘 みやび
父親 雅一朗
株式会社丸雅(老舗の呉服屋)の6代目社長。元来物事に動じない性格か?相当の女たらし。世相から商社に転身。
・父親の雅一朗が亡くなった後、雅也は自慢の池を枯山水に改装。
山本祐一
妹 久美子
「エクステンド」の担当者。千紘からの相談にのり、千紘に勤め先の斡旋や住居を手配。千紘は山本にだけは相談し、頼りにしていた。
・妹の久美子は京都の介護サービス会社に就職。向井の父親雅一朗の介護相手として気に入られていたが、15年前、22歳で失踪。向井雅也が殺人を犯したと真子たちに取引を持ちかける。
夏山千紘(ちひろ)
(19歳)
母親 千代子
(40歳)
長崎市出身、3年前から家出。枚方市の樟葉(くずは)ハイムに住む。何度もリストカットの前例有り。
・千代子 長崎市松山町でスナック経営。
(元夫岩永誠治 5年前暴行事件で服役中)
桐生倖子
(さちこ)
夏山千紘の中学時代所属の手芸クラブの先輩21歳。美容師。
二瓶孝子
(にへい)
NPO法人いのちの110番「エクステンド」の代表。
読後感
 
 新米刑事片岡真子というキャラがおもしろい。京都弁を操り性格は言い出すと聞かない頑固もの。
 自ら進んで希望してきた警察庁からの出向者高藤警部は殺人事件の担当管理官となり   コンビとして真子を指名、勝ち気な真子は行動のなす事全てに未熟さと分析力のなさを指摘されているようで、“スカンタコ”と。

 中野主任や水森班長の、何かと気にかけてくれていることもあり、自ら信じる見識で事件解決に向かっていく。
 犯人と目される向井の巧みな言動にミスリードされる警察。そして山本裕一の態度の急変に取調室で見せた向井を彷彿させるものを感じ取る。
 高藤との仲は坂本龍馬の交流点を見出し次第に真子の見識を認めるようになっていく過程もおもしろい。
 最後まで向井の巧妙な振る舞いに振り回されながら最後に辿り着いた証拠は見つけることが出来たのか?さらに苦境に立たされる高藤、真子の悔しい思いは果たされるのか。
 ラストの鑑識からのメモが・・・。

余談:

 女刑事を主人公の作品はそのキャラがいかに興味をひくかで決まるように思う。今まで読んできた作品では誉田哲也の姫川警部補が個性豊かで秀逸。その他乃南アサの「凍える牙」の音道貴子、誉田哲也の魚住久江シリーズが印象にのぼる。 

 背景画は向井雅也が父親の自慢の池を枯山水に改築したとする問題の大きな石をイメージして。

                    

                          

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