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伊与原新著 『オオルリ流星群』









                  
2022-11-25

(作品は、伊与原新著 『オオルリ流星群』       角川書店による。)

         


本書  2022年(令和4年)2月刊行。書き下ろし作品。

伊与原新(いよはら・しん)本書より)

 1972年、大阪府生まれ。神戸大学理学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科で地球惑星科学を専攻し、博士課程修了。2010年、「お台場アイランドベイビー」で第30回横溝正史ミステリ大賞を受賞し、デビュー。19年、「月まで三キロ」で第38回新田次郎文学賞を受賞。20年刊の「八月の銀の雪」が第164回直木三十五賞候補、第34回山本周五郎賞候補となり、2021年本屋大賞で6位に入賞する。

 主な登場人物:

種村久志
妻 和美
長男 悠人
(ゆうと)
次男 篤人
(あつと)

種村薬局の三代目、薬剤師。調剤と市販薬の販売。近くに大型店舗が出来、創業以来の危機。秦野西高校出身で、文化祭で「空き缶タペストリー」作りの六人の内の一人。
・和美 薬剤師。

勢多修(せた・おさむ) 3年前東京の番組制作会社辞め、秦野に帰り、弁護士を目指し司法試験めざし中。「四十五歳定年制」が持論。バツイチの一人者。

伊藤千佳(ちか)
夫 典明
(のりあき)
長女 佑香
(ゆか)

公立中学の理科の教師。
・夫 中学の英語の教師。千佳が最初の赴任先の先輩教師。

山際彗子(やまぎわ・けいこ)<スイ子> 現役で国立の東都工科大学天文学科に合格、大学院の博士課程を経て国立天文台の研究員に。しかし、辞め、地元に戻り、何かを探し求めている様・・・。
梅野和也

どうやら実家に帰って引きこもっているよう・・・。
実家は千佳の近く。

槙恵介(まき・けいすけ) 文化祭での「空き缶タペストリー」の提唱、推進者。しかし、完成前に抜け、その一年後19歳の夏死んだ。

3年の同級生達
(空き缶タペストリー作りを手助けし、今回の天文台作りに加わって来た)

・辻仁美(ひとみ) 3年D組 
・井出明宏
(あきひろ) 3年D組
・小野寺 3年D組
・八田亮介
(りょうすけ) 3年D組
・玉井優子 3年A組

益井園子(ますい・そのこ)

3年D組に来た教育実習生。皆より4つ年上。
空き缶タペストリー作りの計画をバックアップ。

広瀬
妻 房江

山の持ち主。彗子たちが、天文台を作る場所探しの途中、自転車で転び、負傷をした広瀬を助けたことがキッカケで・・・。
・房江 山の上で喫茶店を営んでいたが、今は寂れて廃屋に。
郵便受けにオオルリが巣を作るのを楽しみにしている。

上田 大工。“オオルリ天文台”作りのサポート役。
 物語の概要:(図書館の紹介記事より。)
  
 宇宙の果てを観測する天文台をDIYするため、再集結した高校の同級生たち。大人になったぼくたちに、もう一度、最高の季節はやってくるのだろうか? 迷える大人たちは、切ない過去と、行き詰まった日常を乗り越え、再び前進することができるのか?
 
 読後感:
 
 秦野の高校3年D組の6人が中心に、文化祭の出し物を、空き缶タペストリー(室内装飾用に壁掛けなどで使われる織物の一種)を作ることに専念した仲間たちの、当時の様子と、それから時が経ち、45歳になった仲間たち5人(一人は自殺)の、年が経った時に、どのような暮らしをし、その中から山際彗子が、天文台作りに協力する物語である。
 その間に展開するそれぞれの生い立ち、時の流れ、苦難の交錯に中に、大人となった仲間たちがどのように立ち向かっていくかがクライマックスへと続いていく。

 印象的なのは、伊藤千佳が悩む、自殺した槙恵介と山際彗子との関係を知り、天文台作りから逸脱しかかった時、自身が教師を目指すキッカケとなった、当時の教育実習生の、益井園子先生に、会いに行き、その時言われた、千佳のこと「伊藤さんはね、たとえて言うと・・・そう、片栗粉みたいなものだよ」「アクがあったり、味が強かったり、舌触りが独特だったりする食材を、ひとまとめにしてまろやかにしちゃう。全部包んで美味しくする。主張しない、邪魔しない。だけどみんなが頼りにしてる、なくてはならない存在」「誰にでもできることじゃないからね。一種の才能」と。

 また、勢多修の自説「45歳定年説」は、自身が経験した会社を辞め、弁護士を目指し司法試験に挑み続ける姿、家に引きこもることになっている梅野和也が、何に情熱を持ち続けているかで、次第に仲間たちとの距離を縮めてきたこと。
 山際彗子の、一見一人で頑張っているその根底にある悩みと、意志の強さも、皆に吐露する姿も。
 いずれにしても、高校時代の仲間たちが集まってきて、一つの物作りに集う姿は素敵な話である。 


余談:

 覚え書きとして、梅野和也がFMミニ局で流されていたという懐かしい楽曲名。
  ・大滝詠一「恋するカレン」
  ・大貫妙子「都会」
  ・伊藤銀次「風になれるなら」
  ・来生たかお「浅い夢」
  ・吉田美奈子「時よ」
  ・佐原博「南回帰線」
  ・松任谷由実「ジャコビニ彗星の日」       YouTubeで聞いてみよう。
 

 

                    

                          

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