物語の大筋:
主人公の新任教師間崎慎太郎と、彼と同期で赴任した女子大出の若い女教師橋本先生、五年B組の私生児で分裂人格を有し、その行動や言動が危なげで、時にはらはらさせられる美少女江波恵子との三角関係が、色々展開している。
読後感:
作品の中に出てくる場面は、視学官による授業視察の授業で、乃木大将の殉死についてのやり取りも面白く、さらに修学旅行での女子高生達の立ち居振る舞い、寄宿舎内での盗難事件、江波恵子の妊娠事件など、現在の小説としてもちっとも違和感のない、興味深い内容である。ただ、間崎先生と橋本先生との間で会話される思想というか、言質の議論にはいささか閉口する。
昔は、若い年で、こんなに議論好きで、理屈っぽい人達がいたのかなあ。。。
石坂洋次郎の生きた時代は、大正14年慶応大学卒業で「近代」から「現代」に転換する大きな節目の時代、プロレタリア文学と新興芸術派が対立していた時代で、そのとき石坂洋次郎は中央から離れて田舎にいた。これが幸いしたという。
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