石田衣良著 『 約束 』
 



 

              2016-04-25



(作品は、石田衣良著 『 約束 』   角川書店による。)

           
 

 初出 約束       「KADOKAWAミステリ」2001年11月号
    青いエグジット  「KADOKAWAミステリ」2002年11月号
    天国のベル    「野性時代」2004年6月号
    冬のライダー   「KADOKAWAミステリ」2002年2月号
    夕日へ続く道   「野性時代」2004年3月号
    ひとり桜     「KADOKAWAミステリ」2003年5月号
    ハートストーン  「野性時代」新創刊号(2003年12月)
 本書 2004年(平成16年)7月刊行。

 石田衣良(いしだいら)(「4 teen」より)

1960年東京生まれ。成蹊大学卒業。広告制作会社勤務後、コピーライターとして活躍。97年「池袋ウエストゲートパーク」でオール読物推理小説新人賞を受賞し作家デビュー。「娼年」「波の上の魔術師」「スローグッドバイ」等著書多数。

主な登場人物:


<第一話> 約束

在原葉治(ヨウジ)
父親 春治
母親 尚子

カンタと幼なじみの同級生。事故で亡くなる。

土井汗多(カンタ)
父親 智哉
母親 由美恵

ヨウジはカンタにとって英雄。霧沢小学校4年3組。クラブ活動も同じ音楽クラブ。ヨウジの死にショック症状となり、死を決意するに至る。
<第二話> 青いエグジット

谷口謙太郎(46歳)
妻 真由子
一人息子 清人
(19歳)

本社総務部勤務だったが2年分の年収上積みを受け入れ退職、リストラ研修中。
息子の清人は中3から引き籠もり3年、その後事故に遭い片足をなくす。わがままいっぱい。妻はおどおどと息子の機嫌ばかりの生活。

笹岡俊介 ダイビングのシニアインストラクター。
<第三話> 天国のベル

西本雄太(10歳)
母親 尚美
父親 晴彦(没)
妹 美知佳
(8歳)

ある朝突然耳が聞こえなくなる。内気な子、言われたことは必ずやり遂げるまじめさ。
尚美は技術系の海外文書の翻訳業務。
夫は2年前不倫の末に交通事故死。
小2の美知佳は甘えん坊。

川辺京子
夫 邦夫
娘 ひかる
(9歳)

夫との離婚調停中。雄太の病院で尚美知り合う。
夫は広告プロダクションをやっていて、若い女の子に手を出し・・。
ひかるは声が出なくて病院に(心因性失声)。

<第四話> 冬のライダー
佐伯正平 モトクロスの練習に励む高校生。
尾沢沙耶 ダンナは有名なノブ尾沢(ライダー)。昔レディースレースに出たいたが、ノブのコーチ。
<第五話> 夕日へ続く道

川本雄吾
父 真治
母 亜希子

不登校の中学1年生、13歳。寒さの中、毎日を外で過ごす。
父は出版社勤務。母は専門学校の講師。

源ジイ 廃品回収の老人。
<第六話> ひとり桜
溝口邦弘 風景写真家、40過ぎ。ランドクルーザーで信濃川上満開の桜を追って2週間の撮影旅行。

長尾美枝子
夫 長尾英次(没)

夫を亡くし約束の桜を見に訪れる。
<第七話> ハートストーン

有坂研吾
父親 久明
母親 志津子

小学4年生、10歳。小脳に腫瘍が出来倒れ入院。

志津子の
 母親 須美
 父親 繁治

研吾の手術当日、繁治心臓病で倒れる。

物語の概要: (図書館の紹介記事より。)

親友を突然失った男の子、不登校を続ける少年と廃品回収車の老人…。苦しみから立ち上がり、うつむいていた顔を上げて、まっすぐに歩きだす人々の姿を色鮮やかに切りとった、絶対泣ける短篇集。

読後感
  

 七話の短編集。どの作品も悲しみの内容が異なるも胸を打つシチュエーションに富んでいる。読者にとっていくつかの場面はより心に響くものがよぎるに違いない。
 自分にとって一番じんときたのは年齢のせいでもあろう<ひとり桜>かな。
 写真撮影の興味と共に、伴侶を亡くした相手方の悲しみがやはりか。美枝子という女性の再生を望んでしまう。

 あとがきには著者は<約束>のベースとなった現実の事件に対する影響が大きかったようだ。やはり一番目に持ってきていることからも推察される。
 もう一つ上げると<天国のベル>。雄太のまじめな性格、そして耳が聞こえなくなるというハンディに大変さが想像に難くない。そして心因性で声が出なくなったひかるの心の闇の部分。
 

  

余談:

 あとがきの著者の言葉
「ぼくはどれほど容赦なく暴力を描いても、さして意味はないと思っています。そんなものより、病や喪失から生きることに立ちもどってくる人間を描くほうが、何倍も力強い。単純にそう信じています。」
「願わくば、そのひとつにわずかでも傷を楽にし、痛みを遠ざける効果がありますように。結局のところ、小説は出来不出来ではなく、届くか届かないかなのです」は賛成。
 

背景画は、清流をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

                    

                          

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