物語の概要: (図書館の紹介記事より)
木造の長屋ともんじゃ焼き、超高層マンションが調和して共存する町・月島の14歳の中学生4人組。恋をし、仲間と語らい、性に悩み、旅に出て…。彼らが卒業までの1年間に出会った8つの瑞々しい物語を収録。
読後感:
中学2年生の14歳少年の四人組(テツロー、ジュン、ダイ、ナオト)。いかにも中学生らしくエロ雑誌に興味を持ち、女の子に関心あり、生活レベルは親によって決まる上忍から下忍まで、見かけもいろいろ。それでも友達のことを思い、年寄りのことにも心を砕き、友達が困ってる時にはそろって手助けをするそんな思いやりのある姿にほのぼのとしたものを感じる。
なかでも<大華火の夜>は、がんで先のみえない老人への中学生らしい思いやりが胸を打った。そして老人の思いやりにもしっかりと理解できている優しさにほろりと。
そしてやはり最後に持ってきた<十五歳への旅>は著者が言いたいことをこの四人の秘密を語るシーンを通して訴えかけていることだろう。ほろりとさせられた。
そしてバックに感じられるのは月島という雰囲気が醸し出す場所の持つ魅力がなんとも好ましく感じられた。昔懐かしい古い街並みと、超高層マンションが建つ街並みのアンバランスが醸し出す雰囲気が良く出ていてバックにふさわしいシチュエーションを感じた。
印象に残る場面:
ダイの秘密:
「おれが怖いのはさ、やっぱり死んだおやじなんだ。おれはおやじが死んでから、アダルトチルドレンの本をたくさん読んだ。どの本にも同じことが書いてあった。子どもをなぐる親は、自分が子どものころ、やはり親になぐられていたって。虐待の連鎖だ。そうなると、おれはいったいこれからどうなるんだ。誰か好きな女と結婚して、子どもができたら、おれもおやじみたいにそいつをなぐるようになるのかな。しまいには、おれがその子に殺されたりするのかな」
ぼくはダイの肩に手をおいて、必死にとめた。ひとりでそんなに遠くまでいってはいけない。・・・・
ダイはそこで初めて泣いたようだった。
「おれは自分が怖いよ。未来のおれが怖いんだよ。大好きなもの、一番ちいさなもの、おれの子を、この手で壊すかもしれないおれが怖いんだ」
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