石田衣良著 『4 teen 』
 



 

              2016-04-25



(作品は、石田衣良著 『4 teen 』   角川書店による。)

           
 

 初出       びっくりプレゼント   「小説新潮」1999年7月号
                月の草   「小説新潮」2001年5月号
               飛ぶ少年   「小説新潮」2002年6月号
             十四歳の情事   「小説新潮」2002年8月号
             大華火の夜に   「小説新潮」2001年12月号
  ぼくたちがセックスについて話すこと    書下ろし
             空色の自転車   「小説新潮」2002年3月号
             十五歳への旅    書下ろし
 本書  2003年(平成15年)5月刊行。 第129回直木賞受賞作品

 石田衣良(いしだいら)(本書より)

 1960年東京生まれ。成蹊大学卒業。広告制作会社勤務後、コピーライターとして活躍。97年「池袋ウエストゲートパーク」でオール読物推理小説新人賞を受賞し作家デビュー。「娼年」「波の上の魔術師」「スローグッドバイ」等著書多数。

主な登場人物:

月島中学2年生(14歳)の四人組
ぼく(北川テツロー) 家の経済的状態で分類すると中忍。平均的な中学生。
ジュン(内藤潤) 中忍。小柄、クラス一の秀才。
ダイ(小野大輔) 下忍。180センチ、100キロ超えの大柄。
ナオト 上忍。月島の超高級超高層マンションに住む。早老症。
<第一話> びっくりプレゼント
聖路加国際病院に入院中のナオトの見舞いに三人でプレゼントを計画。
<第二話> 月の草
立原ルミナ 同じクラスの三人目の不登校者。ぼくの隣のマンションに住む。拒食症。
<第三話> 飛ぶ少年
関本譲(ゆずる) うちのクラスの問題児。飛び降り事件を起こす。
<第四話> 十四歳の情事
玲美 ナオトと同じ超高級超高層マンションの住人。ネットの不倫クラブでジュンとメールのやりとりをする人妻。
<第五話> 大華火の夜に
赤坂一真 国立ガンセンターを抜け出した62歳の老人。廃工場で四人組に出会う。
<第六話> ぼくたちがセックスについて話すこと
森本一哉(カズヤ) どのグループにも属さないクラスで一人きり。おじいさんとの二人暮らし、おじいさんはテーラー・モリモトの仕立て職人。
杉浦和泉 クラス一番の美女。
<第七話> 空色の自転車
島田恒雄 警視庁月島警察署少年課主任、巡査部長。
有野義美 隣のクラスの問題児、Aグループを率いている。
<第八話> 十五歳への旅
ユウナとサヤ 新宿のディスコでであった高一の女の子。

物語の概要: (図書館の紹介記事より)

木造の長屋ともんじゃ焼き、超高層マンションが調和して共存する町・月島の14歳の中学生4人組。恋をし、仲間と語らい、性に悩み、旅に出て…。彼らが卒業までの1年間に出会った8つの瑞々しい物語を収録。

読後感
  

 中学2年生の14歳少年の四人組(テツロー、ジュン、ダイ、ナオト)。いかにも中学生らしくエロ雑誌に興味を持ち、女の子に関心あり、生活レベルは親によって決まる上忍から下忍まで、見かけもいろいろ。それでも友達のことを思い、年寄りのことにも心を砕き、友達が困ってる時にはそろって手助けをするそんな思いやりのある姿にほのぼのとしたものを感じる。

 なかでも<大華火の夜>は、がんで先のみえない老人への中学生らしい思いやりが胸を打った。そして老人の思いやりにもしっかりと理解できている優しさにほろりと。
 そしてやはり最後に持ってきた<十五歳への旅>は著者が言いたいことをこの四人の秘密を語るシーンを通して訴えかけていることだろう。ほろりとさせられた。

そしてバックに感じられるのは月島という雰囲気が醸し出す場所の持つ魅力がなんとも好ましく感じられた。昔懐かしい古い街並みと、超高層マンションが建つ街並みのアンバランスが醸し出す雰囲気が良く出ていてバックにふさわしいシチュエーションを感じた。

印象に残る場面

ダイの秘密:
「おれが怖いのはさ、やっぱり死んだおやじなんだ。おれはおやじが死んでから、アダルトチルドレンの本をたくさん読んだ。どの本にも同じことが書いてあった。子どもをなぐる親は、自分が子どものころ、やはり親になぐられていたって。虐待の連鎖だ。そうなると、おれはいったいこれからどうなるんだ。誰か好きな女と結婚して、子どもができたら、おれもおやじみたいにそいつをなぐるようになるのかな。しまいには、おれがその子に殺されたりするのかな」

 ぼくはダイの肩に手をおいて、必死にとめた。ひとりでそんなに遠くまでいってはいけない。・・・・
 ダイはそこで初めて泣いたようだった。

「おれは自分が怖いよ。未来のおれが怖いんだよ。大好きなもの、一番ちいさなもの、おれの子を、この手で壊すかもしれないおれが怖いんだ」

  

余談:

選評の抜粋を下記すると。
・「滑走感が快い。活字がさわやかな風となって読者へ吹き込んでくるかのようだ。」「なによりもすばらしかったのは、(引用者中略)風俗の泡の中に呑み込まれているかに見える少年たちが、じつは真っ当な、古典的ともいえる友情にもとづいて行動していることだった。」(井上ひさし)
・「ページを繰るたび、新鮮な〈愉しさ(原文傍点〉がピチピチ跳ねているというのは、珍重に価する。」「少年たちの個性を書き分ける筆は、練達の冴えを見せているが常套的ではなく、透明感があって現代の匂いにみちている。」「脂ののった手だれの巧者、のゆとりあり。」(田辺聖子) 以上二重丸。

・「明るく軽快な文章がそのまま作品の芯になっていて、それが実に快い。」「ここに登場する十四歳の少年達が実にいい。或る時は大人、また子供という弥次郎兵衛みたいな不安定の上で、絶妙なバランス感覚と行動力を発揮する痛快さはこの作家の真骨頂であろう。」(平岩弓枝)
・「架空の情景を、身に迫るなまなましさで読者の脳裡に喚起する力は、才能によってことなる。」「作者の文章は、つよい喚起力を持っており、六篇の候補作のなかでは、きわだっていた。」(津山陽)

・「小説というものは“人が歩き、花が咲き、車が走る”ただこれだけのことを書いても文章に味わいがあり、充分にチャーミングであることが望ましい。一番大切な条件かもしれない、とさえ思う。〈フォーティーン〉には、それが感じられた。ごく普通の少年たちの生活を描きながら小説がふくよかで、魅力的に映るのは、このせいだろう。」(阿刀田高)
・「本当にいい小説であった。大人が子どもの世界を書くのはむずかしい。」「皆から好かれていないクラスメイトを話をする時、友人と思われないように、立つ階段の段をずらす、などという描写が本当にうまい。小説の舞台に月島という場所を選んだところも、成功の要素であった。」(林真理子)
 

背景画は、清流をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

                    

                          

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