伊岡 瞬著 『いつか、虹の向こうへ』








              2019-01-25

(作品は、伊岡 瞬著 『いつか、虹の向こうへ』    角川書店による。)

            

 初出 本書は第25回横溝正史ミステリ大賞及びテレビ東京賞を受賞した「約束」に加筆修正、改題したもの。
 本書 2005年(平成17年)5月刊行。

 伊岡 瞬:
(本書より)
 
  1960年東京都武蔵野市生まれ。日本大学法学部卒。現在広告会社勤務。      

主な登場人物:

尾木遼平(りょうへい)
元妻 久美子

元県警の刑事。妻とは離婚。警備会社の日雇いアルバイトをしている。
築30年の家の家主。いわく付きの居候4人と共同生活をしている。目つきの悪い中年の親爺。

柳原潤 19歳
<ジュンペイ>

国立大法学部の青年、但し休学中。ごついが木訥、人の良さそうな顔。

石渡久典
(いしわたり・ひさのり)

綺麗という言葉が似合う年齢不詳の男。
主に英米の経済書の翻訳の仕事を夜している。

村下恭子(きょうこ)

万引きで警備員に警察に突き出されるのを尾木が助ける。
むっつり口もきかない30半ばの女。料理がうまい。

高瀬早希(さき) 21歳

三人のチンピラに痛みつけられる尾木を助けて尾木の家に3日間泊まる。好奇心と人なつっこさの塊のようなうるさい女。

光宮警察署の刑事たち

・室戸警部補 尾木を毛嫌い。
・近川刑事 昔一緒に仕事をしたことがある。
・平田刑事 元尾木の相方。

檜山景太郎 檜山興業の社長、九峰会(県下の9つの組の連合団体)の会長。
新藤拓郎

檜山組の幹部。
・木村

菊池隆一郎

菊池組(檜山組と拮抗する県下有数のヤクザ)の組長。
・辻隆介 義理の弟の甥っ子。

花房伊佐夫 尾木が刑事時代に知った貧乏弁護士。妻との離婚問題を処理。
久保裕也 25歳 高瀬早希のひも。陸橋から落下死亡。陸橋で早希と争う姿が目撃されている。
二宮里奈 25歳 高瀬早希の友人。檜山会長の女。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 職も家族も失った元刑事に残されたのは、居候たちとの奇妙な同居生活だけだった。家出中の少女が彼の家に転がり込んできたことで、殺人事件に巻き込まれてしまい…。横溝正史ミステリ大賞&テレビ東京賞受賞作。       

読後感:

 なかなか面白くてつい読み込んでしまった。途中で描写された離婚の事情にも同情されるが、家族の団らんを望む元刑事が交通整理などのアルバイトをこなしながらも、曰わくある4人の居候と共に団らんらしき共同生活を営んでいる。そこに起こった殺人事件を巡り、居候の一人高瀬早希(彼女が転がり込んだことで共同生活が活性化されて曲がりなりにも家族団らんの形が見えかけてくる)が殺人犯として警察に留置、逮捕される。

 助け出したいと思う主人公の尾木が檜山組のヤクザの会長から初七日までに犯人を捕まえるよう約束させられ、悪戦苦闘する。
 そんな物語の中で居候の人物との出会いが描写されるが、切なさがあり、そして尾木の犯人捜しに協力する様子にぐっとくるものが。

 中でも花房弁護士との出会いと恩返しの話がジンと胸にきた。
 またヤクザの抗争の中、菊池組の辻隆介の人物に好印象を受けたのも少しは人間味を感じるところがよかった。
 本作品がデビュー作品である。
 

余談:

 本の後ろに横溝正史ミステリ大賞の選評が記されている。読んでみて「文章力、構成力、人物造形、話運びの技術・・どれをとっても他の候補作を凌駕している」(綾辻行人評)に納得。   
背景画は、花をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

           
戻る