伊岡瞬 『 痣 』



              2021-02-25


(作品は、伊岡瞬著 『 痣 』    徳間文庫による。)
                  
          

 初出 2016年11月徳間書店より単行本として刊行。
 本書 2018年(平成30年)11月刊行。

 伊岡瞬:
(本書より)  

 1960年東京生まれ。2005年「いつか、虹の向こうへ」で第25回横溝正史ミステリ大賞とテレビ東京賞をダブル受賞しデビュー。ドラマ化された「代償」はベストセラーに。著書に「145gの孤独」「教室に雨は降らない」「もしも俺たちが天使なら」「悪寒」「本性」「冷たい檻」「不審者」などがある。 

主な登場人物:

真壁修(おさむ)
妻 朝美
(旧姓 西塚)

警視庁南青梅警察署奥多摩分署刑事課主任、巡査部長32歳。
捜査一課久須部警部の三係から、数ヶ月前追い出された問題児。
当時の上司は三田村警部補。伊丹に説得され多摩分署に引き取られる。
・朝美 付き合って1年、結婚して1年、妊娠3ヶ月で刺殺される。

南青梅警察署奥多摩分署の人々

・伊丹吉範(よしのり)分署長、警視59歳。伊丹の妻は暴走車によって跳ねられ死亡。そのことで上層部と対立、定年までのわずかな期間多摩分署で飼い殺し状態。
<刑事課> 
・木戸係長、警部補45歳。事実上の現場トップ。
・河原井
宮下 巡査27歳。真壁の相方務める。「捜一にその人あり」の名物警部富岡鉄朗を伯父に持つ。
・岩本 巡査長31歳。真壁に何かと絡んでくる。

伊丹敏和(としかず) 伊丹分署長の息子、巡査部長。真壁の後輩刑事かつ友人。結婚を約束した女性と朝美は高校時代の友人。突然行方不明となる。
南青梅署における捜査本部の面々

・梅崎管理官
久須部警部 捜査一課三係の係長。捜査本部での実質の軍曹。
    渾名:「クズリ」(熊に似たイタチ科の猛獣)
 真壁夫婦の事実上の仲人。
・蔦
(つた)警部 捜査一課四係の係長。第二の殺人事件発生で人員追加される。 渾名:「ヤギ」
・三田村警部補 久須部チームのエース格であったが、四係の欠員のため、蔦が三係に異動させた。有能な男。

青沼幹康(みきやす) 27歳のニート。朝美殺しの犯人と目されるも、張り込みを振り切り凶器を振り回しながら逃走、道路に飛び出しはね飛ばされる。
清塚久志 南青梅署の刑事、25歳。3歳の頃離婚した久須部の実の息子。元奥さんは再婚して清塚姓に、久須部は再婚して男の子をなしている。
猟奇殺人の被害者

・上松志真子 38歳。ファッションヘルス・オレンジピーチ(新宿歌舞伎町)で“まりん”と名乗る。死体の姿勢、肌の色普通じゃない。
・国島知佳
(ちか)「奥多摩ふれあいの森」駐車場での全裸遺体発見。
・小塚文香
(ふみか) 26歳。多摩川の河原にて。スーツケースに押し込んであった。

有馬事件関係者

杉並区の形成・美容外科の個人医院営む有馬一家
・有馬亨(とおる)41歳
・妻 織江30歳
・織江の連れ子結花
(ゆいか)7歳 が全く知らない同士の三人組が夫が外出中に押し入り、織江を強姦、娘共々殺害、帰宅した夫はもみ合い右半身麻痺の後遺症を負う。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 奥多摩分署管内で連続美女冷凍殺人事件が発生。浮き足立つ署員たちの中で、ひときわ動揺している刑事がいた。2週間後、妻の命日を機に辞職すると決めている真壁修だ。被害者の体には妻と同じ“印”が刻まれていた。

読後感:

 南青梅署管轄で猟奇殺人事件が連続して発生。その事件を追う特捜本部に捜査一課三係(久須部警部)と第四係(蔦警部)が投入されて久須部と蔦のチームのバトルが展開。
 久須部と蔦には、久須部係のエース格の三田村警部補が、蔦の係に引っ張られた経緯があるうえ、互いの性格も対照的で面白い。

 それとは別に、南青梅多摩分署には、真壁の妻朝美が殺されたことの行動で、捜査一課の久須部の係からはじかれ、多摩分署の伊丹警視に拾われた真壁修がいる。
 真壁は仲人役の恩のある久須部には叱咤されるも、裏では何かと助けられながら、身勝手な捜査で手柄を立てたことで、捜査本部からはづされ、独自の捜査を相方の宮下巡査とすることに。

 この猟奇事件、真壁の妻朝美の刺殺事件に関連していることに気づくと昔の「有馬事件」に関係していたことが分かり・・・。
 犯人は意外なところから現れる。
 手慣れた展開、久須部の鬼軍曹と真壁の信頼関係、若い宮下と真壁のコンビの魅力となかなか面白い。


余談:

 伊岡瞬の作品は先に「悪寒」他いくつかの作品を読んだが、堂場瞬一、今野敏などの作品と同じく、どれも読者を引きつけ、読破させるテクニックを持っていて、読者には楽しみな作家さんである。 

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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