物語の概要:
主人公は孔子の架空の愛弟子が、孔子の死から33年後、若い孔子の研究者に向かって語るスタイルの物語。(孔子研究の成果がやがて「論語」として出版されることになる。)
時代は春秋時代(前770〜403)、周王朝の後、国が乱れに乱れていた頃、孔子の生まれたのが前551年、魯の国に生まれ、中原地帯を14年間に渡り遊説・放浪の旅を続け、再び魯の国に戻り、70才で没す。孔子という人は、中原きっての大学者、大教育家であって、混乱に混乱を重ねているこの現世の紊れを、人間観、人生観の改革によって救おうとした。
孔子と共に第一期の高弟三人(顔回、子路、子貢)を伴っての、遊説・放浪の時に、世話人として雇われ従った主人公が、仲間のように扱われ、そこで聞く子や高弟の言葉ややりとりが中心になる。
読後感:
1989年(平成元年)、この作品が発表されると、日本にセンセーションが巻き起こり、半年足らずの間に60万冊以上が出版され、その年の日本の年間ベストセラーになったという。
時代の風潮だったのか、どうして?というのが率直な感想。孔子という人物を知りたい、「論語」に関心が高くないと、なかなか読み切れないと思うのだが。
自分としては、井上靖の作品をこれまで「猟銃」「闘牛」「あすなろ物語」「しろばんば」「夏草冬濤」「北の海」と読んできて、好きな作家の仲間入りになったので、晩年の作である「孔子」を読んでみたいと思っただけ。「論語」などで有名な孔子がどういう人物かを知りたいと思ったが、ちょっと物語のスタイルにも戸惑ったし、くどいところもあり、真面目に読み切ったと言うところ。
孔子の言葉が発せられたその時の場面が、どういう状態であったかを再現して、初めて言葉の意味が理解出来るものだと知らされた。そのために著者が何度となく中国を訪れ、資料を調べられたことか。
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