深い深い雪の中で
(梶鮎太小学校6年生の時) 冴子(19才)
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祖母おりょう(梶家先代玄久の妾、玄久死後後妻に入り込む)の妹の一人娘。
祖母と鮎太の二人暮らしの中に冴子が入ってきて、「お姉さま」と呼ぶようにさせる勝ち気な子。鮎太の眼には奇妙に美しく浮き上がって見えてくる。
冴子は伊豆屋に泊まっている大学生の加島に渡す手紙を鮎太に託す。
鮎太は冴子と加島から、自分に一番大きいものを与えられたと思う。 |
寒月がかかれば
(鮎太中学生の時) 雪枝
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転校先の下宿先である渓林寺に住む、去年女学校を卒業の住職の一人娘。
生まれつき明るい顔つきで、常に人の眼の的になっていることの好きな雪枝。鮎太を自由に使い、「大体あんたという人は少し欠けたところがある。もっと口惜しがりなさい。怖がってばかりいてはダメ!男はくやしがるの」と叱咤する。 |
漲(みなぎ)ろう水の面より
(鮎太大学生の時) 佐分利信子
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郷里博多では旧家佐分利家の若き未亡人。学生達の間には行状は、女王蜂か何かのように美しく派手に見えた。貧乏嫌いで、派手で、有名好きで、高慢ちきな性格。年頃の未婚の義妹二人(英子と貞子)がいる。
鮎太より3つ年上。高校時代に好きになり、大学は信子の郷里である九州にする。高校時代の3人の友と共に、佐分利家に出入りするうちに、それぞれ檜になろうとする生き方に違いが現れることに。
鮎太は信子から「貴方は翌檜でさえもないじゃあありませんか。翌檜は、一生懸命に明日は檜になろうと思っているでしょう。貴方は何になろうとも思っていらっしゃらない」と言われてしまう。 |
春の狐火
(鮎太新聞記者となる)
清香
信子
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鮎太はR新聞社に入り、社会部に配属される。その中で二人の尊敬する人物の一人、老記者の杉村春三郎の住む郷里岡山(妻と別れ、一番末の妹清香(22-23才)の二人暮らし)に取材にでかける。
「情熱というものの量は、人間、一定量だと思うんだ。俺の場合は一人の女性にその全部を費い果たしてしまったので、もう今は残っていない。」という鮎太。
そこであった夢のような出来事から、鮎太のつきもの(信子の亡霊)が落ちた。 |
勝負
(鮎太の新聞記者時代) 加島浜子
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小学生時代、伊豆屋の大学生加島の妹。競争紙L新聞社の、鮎太のライバルともいえる左山町介と知り合うが、常に負けていると感じている。左山町介の身辺に起こっ変な事件に巻き込まれ、左山町介と佐伯英子を結婚させる仲立ちをすることに。結婚式の招待客に小さい頃会った加島浜子をみかける。そして左山町介の意外なことを知る。 |
星の植民地
(鮎太、新聞記者の時代) オシゲ
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三の宮の硬派の不良少女。気性は鉄火だったが、眼を細めて笑うと、ひどく優しくなり、むっつりと黙っている時の横顔は、どこかの外国の宮廷の皇女に似ている。戦争中鮎太は遅い結婚をし、妻と二人の幼児を持っていた。大阪に爆撃があり、妻と子供達を鳥取の山村に疎開させ、ひとり暮らしとなる。新聞社に出入りしていた熊井源吉が結婚し、店を出すというので、招待され、オシゲと知り合う。
粗野で生き生きしたものの誘惑に勝てない気がした。 |