井上香織著
       『蜃気楼の彼方に』









                2012-03-25


  (作品は、井上香織著 『蜃気楼の彼方に』    幻冬舎による。)

          

 
本書 2008年(平成年)6月刊行。書き下ろし作品。

井上香織:(本作品の記述より)
 青山学院大学文学部教育学科卒。高校英語教師を経て執筆活動に入る。著書に「さよならの向こう側」
「優しい旋律」等がある。
 物語の展開:図書館の紹介より

 親の望み通り生きてきたけど、私は天使なんかじゃない。弟の死、学校のいじめ…。行き場をなくした私を救ったのは、宇宙の暖かな歌声だった…。過酷な運命を描く、書き下ろし恋愛長編小説。

主な登場人物:

神宮寺家
父 泰造
母 幸恵
娘 飛鳥
 (主人公)
弟 翔太
 (4つ年下)
母方の祖父
 善一朗
・泰造 神宮寺総合病院の院長。専門は外科で執刀も行っている。
・幸恵 親の決められた結婚をさせられる。
・飛鳥 聖純女学館高等部3年生。弟の翔太が亡くなり、病院の後を継ぐため、泰明大医学部に進学するよう命じられている。
・翔太 幼稚園時代、飛鳥小学3年の夏休み、海水浴場での哀しい事故でなくなる。
陽子
兄 圭一郎
 (3歳年上)
同じ聖純女学院の女学生。飛鳥の幼なじみで10年来の付き合い。父親は動物病院を経営していて、兄の圭一郎は私立大の獣医学部に。
藤堂悠治 泰明大医学部の学生。父親は神宮寺総合病院の内科部長。
宇宙 ストリートミュージシャン。哀調の調べに飛鳥関心を惹く。
田中奈菜 高等部から聖純女学館に入ってきた新入り。飛鳥に対抗意識あり、学級委員に立候補し投票して決めたいと。
谷川百合子 飛鳥たちの担任。
蔵持怜子 神宮寺総合病院の内科医師。飛鳥の憧れの人だった。

読後感

「蜃気楼の彼方に」 という題名に惹かれついでに何か一冊借りようと図書館から借りた小説である。 従って予備知識ゼロ、どういう著者か名前も知らなかった。
 はたして内容は飛鳥という高校3年生の頃からの弟を、自分のせいで死なせてしまったと思い、 そのせいで家庭の父と母の間もしっくりいかない、 学校では陽子の他学級委員としてもみんなから愛されていると感じていたのが、 ある時から奈菜という中学部から入ってきた生徒に牛耳られ苛めに晒されるように。 ただストリートミュージシャンの宇宙という青年との交流だけが救いのように。 そして医学部の学生の悠治の誠実さが救いという状態。
 父親のひいた道筋を歩まざるを得ない自分の思い詰めた行動。
 これは恋愛小説だったのだ。

 ちょっと感情移入するには入り込めない感じで読んでいた。 陰湿そうでいてさらりと振り抜けてしまったり、 ぬめっとさせる雰囲気もなく、 綺麗に流れていった小説というところ。
 著者の経歴を見てなるほどと思ったりも。


余談:
 
 母親の幸恵が写経を日課とし、<諸行無常>と<色即是空>について飛鳥に説明している内容を覚え書きとして。 自分もちょくちょく毛筆の練習でやっているので。
 
 <諸行無常> 世の中のすべてのもの、人の心も常に移り変わってゆく
 <色即是空> 己の欲やこだわり、 執着心をすべて捨てれば、 そこに心の安らぎがある。
背景画は本作品の内表紙を利用。 

                    

                          

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